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【後編】135年前の創業当時から日本生命が行うサステナビリティを再確認

【後編】135年前の創業当時から日本生命が行うサステナビリティを再確認

日本生命が定める3つの重点領域「人」「地域社会」「地球環境」への具体的な取り組み。機関投資家としての取り組み。アウトカム目標で掲げた「ニッセイ版健康寿命」について。前編に続き、後編をお届けします。

鹿島 紳一郎(かしま しんいちろう)様
日本生命保険相互会社 執行役員チーフサステナビリティオフィサー(CSuO) 兼主計部長。
1993年入社。広報部長、商品開発部長、浜松支社長など多様な部署を経験し、2022年度から主計部で決算業務などに携わると同時に、2023年度からはサステナビリティ企画室長も務めた。2024年度は、サステナビリティ経営推進部担当執行役員として、日本生命グループのサステナビリティ経営を統括。

目次

日本生命が行う、3つの取り組み

─「人」「地域社会」「地球環境」3つの重点領域の取り組みについてお聞かせください。

鹿島紳一郎氏(以下、鹿島:敬称略):「人」領域については、まず、当社の本業である生命保険商品・サービスの提供を通じて、安心・安全を提供していくことが第一です。それ以外にも、社会貢献という形でも取り組んでいることがあります。そのひとつが、1963年に開場した「日生劇場」に子供たちを無料招待する「ニッセイ名作シリーズ」への協賛です。超長期、かつ、万が一の際に遺された方々の経済的不安を取り除く商品である生命保険を提供する企業として、次代を担う未来世代である、“子ども“を大切にしたいと考えています。その上で私たちにできることは何か、と考えると「様々な体験機会の提供」なのでは、という結論に至りました。夢を描き、実現に向かって努力するのは、子どもたち本人です。夢を叶える子もいれば、別の道を歩む子もいるでしょう。ただ、私たちは、そのきっかけとなる体験機会を提供することで、子どもたちの将来の可能性を拡げることに貢献できたらと考えています。

また、「進学応援奨学金」として、経済的に困難な状況にある高校3年生および受験浪人生へ、大学等への進学のための費用の給付を行っています。大学入学後の奨学金は充実しているのですが、受験前の支援がないことに気づき、夢を叶えるための進学を諦めることなく、挑戦してもらいたいと考えたからです。「進学応援奨学金」では、お金だけではなく、当社職員の手書きの応援メッセージと文具品等のプレゼントを添えて送付しています。デジタル化が進むなか、アナログなことを大切にしていく価値も大切にしていきたい、と考えています。

(開示可能な声・コメント)

■受験者の声
メッセージカード、受験会場にも持って行きました。一生忘れません。うれしかった!
■職員の声
未来を担う世代の力になれてうれしい!応援することでこちらも元気をもらえる!

受験者の声

また、文部科学省が定める教育課程の基準である「学習指導要領」が改訂され、2022年度から「金融商品による資産形成」という視点が学校教育に盛り込まれることになりました。当社は、それより前の2011年から「出前・受入授業」として、職員が学校に行き金融教育を行う機会をいただいています。子どもたちの生の声を聞くことで、職員自身が自分たちの仕事の意義を知ることができ、従業員エンゲージメントにも繋がる取り組みだと考えています。今後も、政府が掲げる国民の金融リテラシー向上に向けて、保険会社としてできることをお手伝いしていきたいと考えています。

「地域社会」では、全国108の支社・約1,500の営業部で、約5万名の営業職員が活動していますので、地域との繋がりも当社の資本の一つだと思っています。今年の元日に起きた能登半島地震では、被災した職員もいましたが、お客様の安否確認などを率先して行いました。日頃よりお客様と顔を合わせている職員だからできることだと感じています。リアルなところで、お客様の身近で寄り添えることは、ひとつの大きな価値として大切にしたいと感じています。

「地球環境」では、1992年から行っている「ニッセイの森」があります。1963年から続いている「ニッセイ名作シリーズ」同様、続けることが力になる、まさにサステナビリティの取り組みだと思っています。保険会社は、これまで契約書等に多くの紙を使ってきました。今はタブレットでの契約も増えていますが、完全にゼロにはできておりません。「ニッセイの森」は、当社が、木を植えることで少しでも地球へお返しをしようと始めたものです。当時、ネイチャーポジティブ(自然再興)という言葉は使われていませんでしたが、この取り組みは先進的で、今にも通じることだと思っています。2002年に100万本の植樹を達成、これは紙に換算すると約100億枚に該当します。この取り組みを従業員にも伝え、次のステップに繋げていきたいと考えています。

TCFD、TNFDレポートについて

―TCFD、TNFDレポートの発刊についてもお聞かせください。

鹿島:最近では、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース )だけでなく、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の重要性も高まっていますので、環境に関する取り組みを統合的に開示する観点から、2024年3月にTCFD・TNFDレポートを発刊しました。

<TCFD・TNFDレポートURL>
https://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gyoseki/tcfdtnfdreport.html

TCFDの分野は、世界共通でCO2削減という目標があります。機関投資家として、2050年ネットゼロを実現するための移行計画(トランジションプラン)を示しています。この移行計画については、欧州とアジアそれぞれの立場で意見があり、国際的な議論や相互理解が不可欠です。NZAOA(注釈1)におけるSteering Groupのアジア代表として、しっかりと役目を果たしていきたいと思っています。

TNFDの分野では、生命保険業は環境負荷の少ない業種のイメージがあるかもしれませんが、機関投資家として様々な業種の企業へ投融資を行っており、その投融資先の環境への影響についても社会的な責任があると考えています。不動産を多く所有し、全国に多くの支社や営業部があり、営業職員が地域で活動させていただいておりますので、その地域の環境課題に対しても取り組んでいかなければなりません。

現在、機関投資家として資金使途がSDGsに繋がるテーマ投融資として5兆円を用意しており、うち脱炭素ファイナンス枠として3兆円の金額目標を設定しています。これら資金を通じ、環境問題に関して新たな技術をもつ企業への資金提供等ができると考えています。また、生物多様性をテーマに、エンゲージメント・テーマ投融資といった機関投資家行動も進めていきたいと考えています。

注釈1)
2050 年までの資産運用ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロにコミットし、実現に向けた取り組みを行っていく保険会社や年金基金等のアセットオーナーによるアライアンス

どのように見える化をしていくのか?「ニッセイ版健康寿命」について

ー社会に対して、どのような影響を与えているか、アウトカム志向についてお聞かせください。

鹿島:当社グループの企業活動が、社会にどのようなインパクトを与えることができるか、そのことを測るべく、今般アウトカム目標を策定しました。そのうちのひとつに、「ニッセイ版健康寿命」があります。平均寿命が伸びても、健康寿命との差が10年程度あると言われています。そこで、契約者の健康寿命を伸ばすことに注目したいと考えました。当社の取り組みによって健康寿命が伸びれば、当社の経営基本理念にある「国民生活の安定と向上に寄与する」ことにつながります。また、生命保険商品やヘルスケアを含むサービスを提供している本業と親和性が高い分野です。強みを活かし、国が掲げる健康寿命延伸目標にも寄与し、社会をより良くしていきたいと考えています。

健康寿命に関わる当社取り組みとして、地域での活動が全国へ展開したものもあります。その一つが「がん検診受診勧奨活動」です。そもそもはある営業部の職員が実践していた活動で、がん検診をご案内したお客様からがんの早期発見につながったこともありました。こういった点も踏まえて、2023年度よりお客様へのがん検診に関する情報提供に加え、がん検診の受診・未受診の理由などについてお客様にアンケートを実施しました。その結果を自治体にフィードバックすることで、自治体のがん検診受診率向上に貢献することを目指しています。これらの活動によってがん検診を受ける方が増え、結果として、健康寿命の延伸につなげて参りたいと考えています。これからも、職員からのアイディアも合わせて、新たなことにもチャレンジし、アウトカム目標達成に向けて取り組んでまいります。

アウトカム目標は、私たちと、契約者を始めとする社会の皆様と共に取り組んでいくチャレンジングな目標であると思います。契約者への商品・サービスの提供を充実させるだけではなく、当社以外の企業・団体・人々と協業する等、活動面も充実していき、幅広い方々を巻き込んでいきたいと考えています。

ここまでご紹介した当社グループのサステナビリティ経営について、当社が目指す社会や、想い・行動をサステナビリティステートメントとして表現しました。「誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会」を目指し、「人」「地域社会」「地球環境」の各領域で行動を示した上で、お客様・社会と共に歩むことを宣言したものです。

これら取り組みを積極的に発信し、社会の皆様に私たちの考えや取り組みについて、より理解を深めていただく。その上で、私たちへの期待を頂戴することで、更なる取り組みの高度化につなげていく。そのような好循環を生み出していきたいと考えています。

─今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。

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