育休中に「このまま今の会社に戻っていいのだろうか」と悩み、転職を検討し始める方は少なくありません。「違法では?」「給付金は?」「保育園はどうなる?」と不安が重なると、動けなくなることもあります。制度上の整理がつけば、自分に合ったペースで情報収集と意思決定がしやすくなります。育休中の転職が法律上どう扱われるか、給付金や保育園との関係、メリットと注意点、そして動き出すタイミングの考え方まで、実務で迷いやすい点を順にまとめました。
育休中の転職活動は違法ではない|法律面からの整理
まず最も気になる「法律上問題があるかどうか」について結論をお伝えします。
育休中の転職は法律違反ではありません。育児・介護休業法には、育休中の転職を禁止する規定はなく、労働者の権利として認められています。また、すでに受給した育休給付金を返還する必要もありません。
厚生労働省もハローワークを通じて育休中の転職手続きに関する情報を公表しており、育児・介護休業法には育児休業中の転職を禁止する規定はなく、厚生労働省・ハローワークでも育休中の転職手続きの方法とその注意事項を公表しています。
ただし、注意したい点があります。
法律上の問題はないものの、就業規則にて育休中の転職を禁止している企業も存在するため、あらかじめ確認しておくことが大切です。そもそも育児休暇は復帰を前提とした制度であり、育休中の退職を禁止されていない場合でも、転職を決めた場合は速やかに上司へ伝えるのがマナーとされています。
育休中に転職を考える理由|多くの人が抱える共通の悩み
XTalent株式会社の調査によると、育休中に転職を考えた女性が57.1%、リーダー職以上では56.6%に上ることが明らかになっています。この調査は、2024年8月に育休取得経験のある女性304名を対象に行われ、復職後の職場環境やキャリアへの影響についての実態が浮き彫りになっています。
転職を考えた理由の代表的なものとして、働き方(リモート・時短勤務の可否等)への不満、昇進・キャリアアップが望めないこと、給与への不満、仕事内容への不満、などが上位に挙がっています。
また、復職後は育休前の業務に戻れる保証はなく、マネジメントなど責任が大きいポジションを任されていた場合、早々に代わりの人材に業務を任せていることも珍しくありません。いわゆる「マミートラック」に突入して簡単な仕事しか任せてもらえない未来が見えてしまうと、働くモチベーションも下がるでしょう。
育休という期間が、自分自身のキャリアや働き方を見つめ直す貴重な機会となっていることがわかります。
育休中に転職活動をするメリット
業務から離れている期間には、次のような強みがあります。それぞれを活かすには、子どもの預け先や体調とのバランスも含めて計画を立てるとよいでしょう。
じっくりと転職活動に時間を使える
育休中は子育てで忙しくありつつも、業務がないため比較的時間に余裕を持って転職活動ができます。子供の生活リズムに合わせて選考対策を行えるほか、気になる業界や企業を徹底的に調査することも可能です。焦って次の転職先を見つける必要もないため、自己PRや応募書類等の丁寧なブラッシュアップも行えます。
引き継ぎの負担が少ない
業務の引き継ぎは育休前に完了しているため、転職に際して追加の引継ぎ業務は不要な場合がほとんどです。すでに現場には後任がおり、著しい混乱や負担を避けられるでしょう。
育児を前提としたキャリア選択ができる
育休中にキャリアを見直す際は、育児とキャリアの両立がしやすい職場環境を選ぶことで、長期的なキャリア形成にもプラスとなりやすいです。
育休中の転職活動における主なデメリット・注意点
ここからは、見落としがちな制約やリスクです。転職を進める前に、自分の状況に当てはまるかどうかを確認しておくと安心です。
①育児休業給付金が打ち切られるリスクがある
育児休業給付金については、退職時点で以降の給付金は打ち切りになります。満額受給するには、一度復職するか満期まで待つ必要があります。また、新しい職場での給付金受給には別途条件があります。
さらに、育休中に転職先が決まり、本来の復帰時期より前倒しで入社日を提示された場合は、育休給付金が打ち切られ、受給額が減ってしまう可能性もあるため注意が必要です。
なお、2025年4月からは育児休業給付金の制度改正が行われており、育休中の収入が「実質的に休業前の手取り賃金と同等」になる仕組みが導入されています。育児休業給付金(67%)に加えて13%相当が上乗せ支給される「出生後休業支援給付」が新設され、社会保険料の免除や給付金の非課税扱いとあわせて、実質的な手取り額が休業前の賃金と同程度になるとされています。
転職を検討している場合、給付金の受給状況と退職のタイミングを慎重に見極める必要があります。
②保育園の入園・継続に影響が出る可能性がある
育休中の転職における最大の注意点の一つが保育園問題です。
保育園の入園を申し込む際、育休中の会社名・勤務時間で申請し審査が行われているため、育休中の入園前に転職をすると、申込内容と違うと判断されてしまい、入園が取消になることもあります。自治体によって扱いが異なるため、産休・育休前の復職証明書が必要なのか、転職先の就労証明書でもよいのかを必ず事前に確認しましょう。
事前に自治体の窓口で詳細な情報を収集し、計画的に転職活動を進めることが重要です。
③入社後すぐに時短勤務等の制度が使えない場合がある
時短勤務などの両立支援制度については、入社1年未満の場合、利用できないケースがあります。これは法律で定められた「労使協定」により、企業が適用除外とすることが認められているためです。
転職先でもすぐに時短勤務を希望する場合は、面接の段階で確認しておくことが大切です。
④子どもの預け先の確保が必要
多くの企業が、平日の日中に面接を行っているので、育休中で時間を確保しやすい状態であっても、子どもの預け先がなければ面接に行くことができません。一次面接でWeb面接をしている企業でも最終面接は対面という場合がほとんどです。
転職活動を成功させるタイミングと進め方
「保育園が決まってから」が基本
育休中に転職活動を始める理想的なタイミングは「保育園が決まったらすぐ」とされています。転職において特に重要視されるのは「子供の預け先を確保できているか」という点です。企業は年間人員計画があり、入社のタイミングが不明確なままでは内定を出しにくい場合があります。
目安の流れとしては、秋口に現職の就労証明書などをそろえて保育園を申し込み、1〜2月ごろに入所通知が届くケースが多いとされています。転職活動の本格スタートは1〜2月、情報収集と書類づくりを進め、保育園が確定してから面接を受け始める、といった段取りが現実的です。退職と転職先入社は4〜6月ごろをイメージしつつ、自治体や園の日程に合わせて調整します。
スケジュールは「復職予定日の3ヶ月前」から逆算する
一般的には転職準備から応募・面接選考などにかかる期間は3カ月程度のため、目安としては復帰予定日から逆算して3カ月前程度から転職活動を始めるといいでしょう。有給休暇の残日数や、就業規則に記載されている退職意思を伝える期日なども確認しておくことも大事です。
転職先が決まってから退職する
育休中の転職では、転職先が決まってから現職を退職することをおすすめします。退職すると育児休業給付金が受け取れなくなるため、転職先が決まってから退職することで、経済的なリスクを軽減できます。
面接では育児サポート体制を具体的に伝える
応募企業から「子どもの急な体調不良などで早退や休みなどが発生し、業務に支障が出るのではないか」などの懸念をされる可能性もあります。配偶者や同居する家族、近隣に住まう親族などと協力体制を作ったり、急なタイミングでも利用できる病児保育や一時預かりなどのサービスについて調べておいたりすることもポイントです。
転職エージェントを積極的に活用する
転職活動をスムーズに進めるには、転職エージェントの活用がおすすめです。転職エージェントは、豊富な求人情報と専門知識を持っているため、育児と仕事の両立を考慮した求人を紹介してくれます。企業の育児支援制度や職場環境についての詳細な情報も得られるため、ミスマッチも防げるでしょう。
育休中の転職活動チェックリスト
転職を検討する前に、次の点を一度紙やメモに書き出して整理してみてください。現職の就業規則に、育休中の転職を制限する規定がないか。育児休業給付金の受給状況と、退職のタイミングの兼ね合いはどうか。保育園の申請状況や、入園・継続に影響しそうな自治体のルールは把握できているか。子どもの預け先や、面接の日時に備えたサポート体制はあるか。パートナーと、転職活動中の家事や育児の分担について話し合えているか。転職先では、時短勤務やフレックス、リモートワークなどの両立支援があり、入社直後から使えるかどうかまで確認すると安心です。
まとめ
育休中の転職活動は、法律上問題のない行為であり、育休を利用してキャリアの見直しを行い、新たな職場への転職を決意する人も増えています。
一方で、給付金の打ち切りリスク、保育園問題、子どもの預け先確保など、通常の転職以上に準備が必要な点も多くあります。
まずは「保育園の入園確定」と「給付金受給期間の見極め」を軸にスケジュールを組み、転職エージェントなどの専門家を活用しながら、計画的に進めることが成功への近道です。今の職場への復職と転職のどちらが自分と家族にとってベストな選択かを、焦らず冷静に検討してみてください。

