エアコン業界で世界第1位のシェアを誇るダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)。グローバル企業として約170カ国に事業展開し、安定した経営基盤を持つ同社への転職を検討されている方も多いのではないでしょうか。
転職を検討する際に重要な要素の一つが福利厚生制度です。ダイキン工業は大手メーカーとして基本的な福利厚生は整備していますが、住宅手当については同業他社と比較してやや控えめな内容となっています。一方で、海外駐在時の手当や財形貯蓄制度などには充実した面もあります。
本記事では、ダイキン工業の福利厚生制度について、住宅関連制度、健康・医療関連制度、休暇・働き方制度、教育・研修制度、各種手当、退職金制度まで詳しく解説します。転職検討者の皆様の意思決定に役立つ具体的な情報をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。
ダイキン工業の会社概要
ダイキン工業は1924年に創業された空調機器メーカーのリーディングカンパニーです。空調事業では2010年からキャリア社を抜き世界第1位のシェアを誇り、約170カ国に事業展開する真のグローバル企業として成長を続けています。フッ素化学製品においてもデュポン社に次ぐ世界第2位のシェアを持ち、換気事業やフィルタ事業でも世界トップクラスの地位を確立しています。海外売上比率は約8割に達し、全従業員の約8割が日本国外で働いているのが特徴です。
ダイキン工業の基本情報
項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | ダイキン工業株式会社 |
本社所在地 | 大阪府大阪市北区梅田1-13-1 大阪梅田ツインタワーズ・サウス |
設立年 | 1924年(創業)、1934年2月14日(法人設立) |
業種 | 機械・精密機器 |
事業内容 | 空調・冷凍機事業、化学事業、その他事業 |
上場市場 | 東京証券取引所プライム市場 |
ダイキン工業の事業は大きく3つの分野に分かれています。主力となる空調・冷凍機事業では、家庭用ルームエアコンから大型ビル用空調システム、船舶用エアコン、冷凍・冷蔵用ショーケースまで幅広い製品を手がけています。化学事業では、フルオロカーボンガスやフッ素樹脂などのフッ素化学製品を製造し、半導体製造や自動車産業など様々な分野に供給しています。その他事業では、油機関連製品や特機関連製品の製造・販売を行っており、多角的な事業展開により安定した収益基盤を築いています。2024年3月期の連結売上高は2兆9,553億円に達し、創業100周年を迎えた現在も持続的な成長を続けています。
ダイキン工業の福利厚生制度の特徴
ダイキン工業の福利厚生制度は、大手メーカーとして基本的な制度は整備されているものの、同業他社と比較して住宅関連の支援が控えめであることが特徴です。一方で、グローバル企業としての海外駐在時の手当は充実しており、財形貯蓄制度や持株会制度などの資産形成支援にも力を入れています。労働組合の力が強く、近年はベースアップや初任給の引き上げにも積極的に取り組んでいます。
住宅関連制度
ダイキン工業の住宅関連制度は、社宅・寮制度を中心とした構成となっており、住宅手当については限定的な支給となっています。住宅手当は独身者で月額6,000円、既婚者で月額12,000円程度の支給に留まり、大手メーカーとしては控えめな水準です。
一方で、転勤や配属時の住宅支援制度は充実しています。実家から通勤が困難な場合や転勤を伴う異動の際には、独身寮や借り上げ社宅が提供されます。独身寮は32歳まで利用可能で、月額10,000円程度の使用料でガス・水道代は会社負担となります。ただし、利用には実家からの通勤時間が2時間以上かかることが条件となっており、入居の基準は厳しく設定されています。
借り上げ社宅制度では、月額15,000円程度の個人負担で住居が提供されますが、こちらも転勤時など特定の条件下での利用に限定されています。一般的な家賃補助制度はないため、社宅・寮を利用できない場合の住宅費負担は社員個人となるのが実情です。
健康・医療関連制度
ダイキン工業の健康・医療関連制度は、大手企業として標準的な内容が整備されています。社会保険は健康保険・厚生年金が完備されており、安心して働ける基盤が提供されています。
健康診断については定期的な実施が行われており、安価で利用できる保険制度も用意されています。社員食堂も充実しており、栄養バランスの取れた食事を手頃な価格で提供しています。ただし、化学プラントを持つ事業所では火気使用の制限があり、食堂で提供される温かい食事の選択肢が限られる場合があります。
社員の健康管理については、労働安全衛生に関する取り組みも積極的に行われており、職場環境の改善にも継続的に取り組んでいます。特に製造現場では安全第一の方針のもと、定期的な安全教育や健康チェックが実施されています。
休暇・働き方制度
ダイキン工業の休暇・働き方制度は、従業員のワークライフバランスを重視した充実した内容となっています。最も特徴的なのは極めて高い有給取得率で、組合員であればほぼ100%の取得を実現しています。年間22日間の有給休暇が付与され、有給取得に対する敷居が低く、1週間前程度の申請でも取得可能な環境が整備されています。
特別休暇制度も充実しており、最大5連続の連続休暇制度があり、結婚記念日などのアニバーサリー休暇も取得できます。多くの社員が長期休暇を利用して海外旅行に出かけるなど、プライベートの充実を図れる制度設計となっています。
フレックス制度については部署や上司によって運用に差があるものの、導入されており、午前中の病院受診なども可能です。妊娠から育児期では始業・終業時間を社員が決定できるフレックス制度も設けられており、ライフステージに応じた働き方が可能です。在宅勤務制度も導入されており、コロナ禍を経て定着しています。
教育・研修制度
ダイキン工業の教育・研修制度は、「人を基軸におく経営」という企業文化のもと、非常に充実した内容となっています。新入社員研修は5泊6日の合宿形式で実施され、井上会長・十河社長も必ず参加するほど力を入れています。人の成長を起点とした考え方を大切にし、全社を挙げて人材育成に取り組んでいます。
資格取得支援制度も手厚く、業務上必要な資格については会社が費用を負担し、初回受験は会社負担で実施されています。ただし、会社が指定するレベルの資格受験が求められ、自主的に高難易度資格に挑戦する場合は自費となります。Eラーニングや語学研修なども整備されており、海外駐在を見据えた語学習得支援では海外研修も実施され、給料も通常通り支払われます。
社内のノウハウ共有を目的とした勉強会やセミナーも定期的に開催されており、個々のレベルアップを図る仕組みが構築されています。キャリアに合わせた研修制度により、社会人としての基礎知識から専門スキルまで段階的に習得できる環境が整っています。
ダイキン工業の各種手当・補助制度
ダイキン工業の各種手当・補助制度について、住宅手当以外の主要な手当を表にまとめました。通勤手当は満額支給され、ガソリン代なども含めて実費での支給となっています。
制度・手当名 | 内容 | 対象者 |
---|---|---|
通勤手当 | 満額支給(実費) | 全従業員 |
家族手当 | 配偶者・子供に対する手当 | 扶養家族を持つ従業員 |
資格取得支援 | 業務上必要資格の受験費用・書籍代 | 該当資格取得者 |
海外駐在手当 | 基本給の約2倍相当の手当 | 海外駐在者 |
福利厚生倶楽部 | 宿泊・レジャー施設・映画館等の割引 | 全従業員 |
マザーケアサービス | 病気・残業・出張時の保育者派遣 | 子育て中の従業員 |
特に注目すべきは海外駐在時の手当の充実です。海外駐在者には実質的に基本給の約2倍相当の手当が支給され、生活費相当額以上の支援が受けられます。ダイキン工業は海外売上比率が約8割を占めるグローバル企業であり、海外駐在の機会も多いため、この手当は大きなメリットとなります。
子育て支援としてのマザーケアサービスは、急な残業や出張時に保育者を派遣するサービスで、働く親にとって心強い制度です。また、福利厚生倶楽部により、レジャー施設や映画館などを割引価格で利用できる制度も整備されています。
ダイキン工業の退職金・年金制度
ダイキン工業の退職金制度は、確定拠出年金を主体とした制度設計となっています。従来の退職金制度から確定拠出年金制度への移行を進めており、従業員が老後生活の備えを豊かにすることを支援する目的で運営されています。
確定拠出年金制度では、給与とは別に資格等級・評価等に応じて会社が拠出する掛金を、従業員が用意された銘柄の中から選択し、自ら運用を行う仕組みとなっています。時代に合わせた自助努力での財産形成を支援するため、投資教育も充実させており、従業員の金融リテラシー向上にも取り組んでいます。
キャリア採用者については、前職で積み立てていた確定拠出年金を移換することも可能で、転職時の制度の継続性にも配慮されています。また、従業員持株会制度も併設されており、ダイキン工業株を小額から購入でき、奨励金として拠出金の10%を会社が積立額に充当する制度となっています。
なお、一部の口コミ情報では「退職金はなく、確定拠出年金になる」との声もあり、従来型の退職金制度から確定拠出年金制度への移行が進んでいることが伺えます。この変更により、従業員は自分自身で老後資金の運用を行う必要がありますが、運用次第では従来の退職金以上の資産形成も可能になっています。
ダイキン工業の福利厚生の評判・口コミ
ダイキン工業の福利厚生に関する従業員の評判・口コミを見ると、制度によって評価が分かれています。特に住宅関連制度については、住宅手当の少なさを指摘する声が多く見られます。
住宅手当については「住宅補助はほぼほぼ無い」「家賃補助制度がなく、住宅手当は独身者6,000円、既婚者12,000円と乏しい」との評価が目立ちます。また、「社宅に住めなくなると、一切住宅手当はありません」「住宅手当は8年目以降はまったく無くなる」など、制度の限定性や期間制限についても不満の声があります。
一方で、有給取得については高い評価を得ています。「有給取得率100%を目指しており、全社的に有休は必ず取れる」「組合員の有給休暇の取得率は100%に近い」「有給取得はほぼ100%強制で取得させられます」など、休暇制度の充実を評価する声が多数あります。
基本的な福利厚生については「社会保険完備、退職金制度あり、基本的な福利厚生は揃っている」「大企業ですので、一通りは揃っていると思います」と標準的な評価となっています。福利厚生倶楽部についても「宿泊やレジャー施設、映画館、フィットネスクラブなどを割引価格で利用できる」と実用的な制度として評価されています。
他社との福利厚生比較
ダイキン工業の福利厚生を同業他社と比較すると、住宅関連制度では他社に劣る一方、休暇制度では業界トップクラスの水準を保っています。主要競合企業との比較を以下の表にまとめました。
制度 | ダイキン工業 | 三菱電機 | パナソニック |
---|---|---|---|
住宅手当 | 独身6,000円/既婚12,000円 | より充実した支給 | より充実した支給 |
有給取得率 | ほぼ100% | 高水準 | 高水準 |
退職金制度 | 確定拠出年金中心 | 退職金+企業年金 | 退職金+企業年金 |
海外駐在手当 | 基本給の約2倍相当 | 充実 | 充実 |
社宅・寮制度 | 独身寮・借上社宅あり | 独身寮・社宅あり | 独身寮・社宅あり |
住宅手当については、同業他社の三菱電機やパナソニックと比較すると、ダイキン工業の支給額は控えめです。大手メーカーとしては住宅関連の福利厚生が弱い部分と言えるでしょう。
一方で、ダイキン工業の強みは有給取得のしやすさと海外駐在時の手当の充実です。東洋経済オンラインの「有給休暇の取得率が高い200社ランキング」では10位にランクインしており、ワークライフバランスの面では他社と比較しても優位性があります。
海外駐在については、海外売上比率約8割というグローバル企業としての特性を活かし、手厚い手当が用意されています。この点は総合家電メーカーと比較してもダイキン工業の特長と言えるでしょう。
ダイキン工業への転職で注目すべき福利厚生ポイント
ダイキン工業への転職を検討する際は、住宅関連制度の限定性を理解した上で、他の福利厚生制度や働き方の充実度を総合的に判断することが重要です。特に海外志向がある方や、ワークライフバランスを重視する方には魅力的な環境となっています。
転職時の福利厚生チェックポイント
ダイキン工業への転職を検討する際の福利厚生チェックポイントをまとめました。特に現在の職場との条件比較や、将来のライフプランを考慮した検討が重要です。
- 住宅費負担の覚悟:住宅手当が少ないため、住宅費は基本的に自己負担となることを理解する
- 社宅・寮の利用条件:転勤時の社宅や実家からの距離による寮利用の可能性を確認する
- 有給取得のしやすさ:ほぼ100%の取得率でワークライフバランスを重視できる環境
- 海外駐在の機会:グローバル企業として海外勤務の可能性と充実した手当を確認する
- 確定拠出年金制度:退職金制度の変更により、自己責任での資産運用が必要になることを理解する
- 財形貯蓄・持株会:資産形成支援制度の活用可能性を検討する
入社後の手続きと利用方法
ダイキン工業入社後の福利厚生制度の手続きと利用開始時期について解説します。スムーズな制度利用のため、事前に手続きの流れを把握しておくことが重要です。
確定拠出年金については、入社時に制度説明と投資教育が実施され、運用商品の選択を行います。前職で確定拠出年金に加入していた場合は、資産の移換手続きを行うことで継続的な運用が可能です。従業員持株会への加入は任意ですが、会社からの奨励金10%の恩恵を受けられるため、多くの社員が活用しています。
福利厚生倶楽部については入社と同時に利用可能となり、専用サイトやアプリから宿泊施設やレジャー施設の予約・利用ができます。有給休暇は法定通り入社6ヶ月後から付与されますが、入社初年度から取得しやすい環境が整備されています。
社宅・寮の利用については、配属先や実家からの距離によって利用可能性が決まります。転勤を伴う配属の場合は入居手続きが進められ、個人負担額は月額10,000~15,000円程度となります。マザーケアサービスなどの子育て支援制度は、必要に応じて人事部への相談・申請により利用開始となります。
まとめ
ダイキン工業の福利厚生制度は、住宅手当の控えめな支給という弱点はあるものの、有給取得率の高さ、海外駐在時の手厚い手当、充実した教育・研修制度など、多くの魅力的な制度を備えています。特に、組合員であればほぼ100%の有給取得が可能な環境は、ワークライフバランスを重視する転職検討者にとって大きなメリットとなるでしょう。
住宅関連の福利厚生については、独身者月額6,000円、既婚者月額12,000円と同業他社と比較して控えめですが、社宅・寮制度や転勤時の住宅支援により一定のサポートは受けられます。また、確定拠出年金制度への移行により、従来の退職金制度とは異なる自己責任での資産運用が求められますが、適切な投資教育も実施されており、運用次第では従来以上の資産形成も可能です。
海外売上比率約8割を誇るグローバル企業として、海外駐在時には基本給の約2倍相当の手当が支給されるなど、国際的なキャリアを目指す方には非常に魅力的な環境が整っています。教育・研修制度も充実しており、語学研修や海外研修なども会社負担で実施されるため、スキルアップとキャリア形成の両面でサポートを受けられます。
転職を検討される際は、住宅費負担の増加可能性を織り込んだ上で、ワークライフバランスの良さ、グローバルなキャリア機会、安定した大手企業での働き方などを総合的に判断することをお勧めします。特に、海外志向がある方、プライベートの時間を大切にしたい方、長期的なキャリア形成を重視する方にとって、ダイキン工業は魅力的な転職先となるでしょう。
※出典:ダイキン工業株式会社 採用サイト、ダイキン工業株式会社 公式サイト(働き方について)、OpenWork(口コミ情報)、エンゲージ会社の評判(口コミ情報)、就活会議(口コミ情報)