伊藤忠商事株式会社（以下、伊藤忠商事）は、日本を代表する総合商社として、充実した福利厚生制度で知られています。住宅支援から健康管理、教育研修まで幅広い制度を整備しており、従業員の働きやすさとキャリア形成を支援しています。

本記事では、伊藤忠商事の福利厚生制度について、転職を検討されている方に向けて詳しく解説します。住宅手当や各種手当、休暇制度、退職金制度まで、実際のデータに基づいて紹介していますので、転職活動の参考にしてください。

伊藤忠商事の会社概要

伊藤忠商事は1858年に創業された日本最古の総合商社の一つで、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報・金融の8つのカンパニー制を採用しています。売上高は約12兆円を超える規模を誇り、世界約60カ国に約100の拠点を持つグローバル企業です。近年では非資源分野に注力し、消費者に近いビジネスモデルで持続的な成長を実現しています。

伊藤忠商事の基本情報

項目	詳細
会社名	伊藤忠商事株式会社
本社所在地	東京都港区北青山2丁目5番1号
設立年	1949年（創業1858年）
業種	卸売業（総合商社）
事業内容	繊維、機械、金属、エネルギー・化学品、食料、住生活、情報・金融事業
上場市場	東京証券取引所プライム市場
従業員数	4,170名（単体、2024年3月末）
売上高	12兆5,936億円（2024年3月期）

伊藤忠商事の事業は8つのカンパニーに分かれており、繊維カンパニーでは衣料・生活資材の企画製造販売、機械カンパニーでは自動車・建設機械・船舶・航空機などの取扱い、金属カンパニーでは鉄鉱石・石炭などの資源開発から鉄鋼製品の販売まで手がけています。エネルギー・化学品カンパニーでは石油・ガス開発や化学品取引、食料カンパニーでは食品の製造加工から流通まで、住生活カンパニーでは不動産開発や建設資材、情報・金融カンパニーではIT関連事業や金融サービスを展開し、幅広い分野で事業を行っています。

伊藤忠商事の福利厚生制度の特徴

伊藤忠商事の福利厚生制度は、「人を大切にする経営」の理念のもと、従業員が長期的に活躍できる環境づくりを重視しています。総合商社としての特性を活かし、海外赴任制度や語学研修などグローバルなキャリア形成を支援する制度が充実している点が大きな特徴です。また、ワークライフバランスの向上を図るため、働き方改革にも積極的に取り組んでおり、柔軟な勤務制度や充実した休暇制度を整備しています。

住宅関連制度

伊藤忠商事では、従業員の住宅事情をサポートする充実した制度を提供しています。独身者向けには会社が借り上げた独身寮を用意しており、家賃負担を大幅に軽減できます。既婚者には住宅手当が支給され、持ち家取得時には住宅融資制度も利用可能です。

海外赴任者については、赴任先での住宅は会社が全額負担するほか、日本の自宅維持費についても一定額まで補助が受けられます。また、転勤に伴う引越し費用は全額会社負担となっており、全国各地への異動が多い総合商社ならではの手厚いサポート体制が整っています。

健康・医療関連制度

健康管理においては、伊藤忠商事健康保険組合による手厚い医療保険制度が整備されています。年1回の定期健康診断に加え、35歳以上の従業員には人間ドックの受診が義務付けられており、受診費用は全額会社負担です。また、配偶者についても人間ドック費用の補助制度があります。

メンタルヘルス対策として、産業医による相談窓口の設置や、外部カウンセリングサービスの利用も可能です。さらに、インフルエンザ予防接種費用の全額補助や、健康診断結果に基づく保健指導なども実施されており、予防医学の観点からも従業員の健康をサポートしています。

休暇・働き方制度

伊藤忠商事では、働き方改革の一環として柔軟な休暇・勤務制度を導入しています。年次有給休暇は法定を上回る日数が付与され、取得率向上のための施策も積極的に実施されています。2023年度の有給取得率は約75%となっており、業界内でも高い水準を維持しています。

特別休暇制度も充実しており、結婚休暇、忌引休暇、配偶者出産休暇などが設けられています。育児・介護支援では、法定を上回る育児休業制度があり、男性の育児休業取得も推進されています。また、短時間勤務制度や時差出勤制度も導入されており、ライフステージに応じた働き方が選択できます。

フレックスタイム制度も導入されており、コアタイムを設けながらも柔軟な勤務時間の選択が可能です。さらに、テレワーク制度も整備されており、業務の性質に応じて在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務も認められています。

教育・研修制度

総合商社として幅広い事業領域を持つ伊藤忠商事では、従業員のスキルアップとキャリア形成を支援する充実した教育・研修制度を提供しています。新入社員研修では、商社パーソンとして必要な基礎知識やビジネススキルを習得するプログラムが組まれており、その後も階層別研修や職能別研修が継続的に実施されます。

語学研修制度では、英語をはじめとする外国語習得を全面的にサポートしており、海外留学制度やMBA取得支援制度も設けられています。特に、将来の経営幹部候補者向けには海外大学院への留学機会が提供され、学費や生活費は会社が全額負担します。また、各種資格取得についても受験料や教材費の補助制度があり、自己啓発を積極的に支援しています。

伊藤忠商事の各種手当・補助制度

制度・手当名	内容	対象者
住宅手当	月額上限5万円（地域・世帯構成により変動）	全従業員
交通費	通勤定期代全額支給	全従業員
家族手当	配偶者月額1万5千円、子供1人につき1万円	扶養家族がいる従業員
海外赴任手当	基本給の20-40%（赴任地により変動）	海外赴任者
語学手当	TOEIC800点以上で月額5千円	該当スコア取得者
資格取得支援	受験料・教材費補助（上限年間10万円）	全従業員
慶弔見舞金	結婚祝金・出産祝金・弔慰金等	該当事由発生者

伊藤忠商事の各種手当制度は、従業員の生活を幅広くサポートする内容となっています。特に海外赴任手当については、総合商社としての特性を反映し、赴任地の生活水準に応じて手厚い支援が行われます。また、語学手当のように、業務に直結するスキル向上を促進する仕組みも整備されています。

伊藤忠商事の退職金・年金制度

伊藤忠商事では、確定給付企業年金制度と確定拠出年金制度を併用したハイブリッド型の退職給付制度を採用しています。確定給付企業年金制度では、勤続年数と最終給与に基づいて給付額が算定され、長期勤続者に対して手厚い保障を提供しています。

確定拠出年金制度においては、会社が拠出する掛金に加えて、従業員による追加拠出も可能となっており、老後の資産形成をサポートしています。また、早期退職制度や選択定年制度なども設けられており、多様な退職プランに対応した制度設計となっています。退職金の具体的な支給額については、勤続年数や職位により大きく異なりますが、同業他社と比較しても競争力のある水準が維持されています。

伊藤忠商事の福利厚生の評判・口コミ

従業員満足度調査や転職口コミサイトにおいて、伊藤忠商事の福利厚生は総じて高い評価を得ています。特に住宅支援制度や海外赴任時のサポート体制について、「他社と比較しても非常に充実している」との声が多く聞かれます。

評価が高い制度として、独身寮の家賃負担軽減効果、人間ドック費用の全額補助、充実した研修制度が挙げられています。また、育児・介護支援制度についても、「制度が整っているだけでなく、実際に利用しやすい職場環境がある」という評価が見られます。一方で、総合商社特有の転勤の多さについては、住宅支援制度でカバーされているものの、家族への負担を懸念する声もあります。

他社との福利厚生比較

制度	伊藤忠商事	三菱商事	三井物産
住宅手当	月額上限5万円	月額上限4万円	月額上限5万円
有給取得率	約75%	約70%	約72%
退職金制度	確定給付・確定拠出併用	確定給付・確定拠出併用	確定給付・確定拠出併用
海外赴任手当	基本給の20-40%	基本給の25-45%	基本給の20-40%
研修制度	MBA留学支援あり	MBA留学支援あり	MBA留学支援あり

総合商社5大商社の中でも、伊藤忠商事の福利厚生制度は競争力のある水準を維持しています。特に有給取得率については業界内でトップクラスの数値を示しており、働き方改革への取り組みが評価されています。住宅支援や海外赴任手当についても、同業他社と比較して遜色のない制度内容となっています。

伊藤忠商事への転職で注目すべき福利厚生ポイント

転職時の福利厚生チェックポイント

伊藤忠商事への転職を検討する際は、以下のポイントを重点的に確認することをお勧めします。まず、住宅支援制度については、転勤の可能性や勤務地によって適用される制度が異なるため、自身のキャリアプランと照らし合わせて検討が必要です。

海外赴任の機会が多い総合商社では、海外赴任時の待遇や帰国後のキャリアパスも重要な確認事項です。また、教育・研修制度については、語学研修や MBA留学支援など、長期的なキャリア形成に関わる制度の詳細を把握しておくことが大切です。退職金・年金制度についても、前職からの通算や移管手続きについて事前に確認しておきましょう。

入社後の手続きと利用方法

入社後は、まず健康保険組合への加入手続きと、各種手当の申請を行います。住宅手当については、入社後1ヶ月以内に必要書類を提出する必要があります。独身寮への入居希望者は、入社前に申込みを完了させておくことが推奨されます。

確定拠出年金制度への加入手続きも入社時に行われ、運用商品の選択や拠出額の設定を決定します。各種研修制度の利用については、上司との面談を通じて年度計画を立て、適切なタイミングで申請を行います。福利厚生制度の詳細については、入社時に配布される従業員ハンドブックや社内イントラネットで確認することができます。

まとめ

伊藤忠商事の福利厚生制度は、総合商社としての特性を活かした充実した内容となっています。住宅支援から健康管理、教育・研修、退職給付まで、従業員のライフステージに応じた手厚いサポート体制が整備されており、長期的なキャリア形成を支援する環境が整っています。

特に海外赴任制度や語学研修、MBA留学支援など、グローバルに活躍したい方にとって魅力的な制度が多数用意されています。転職を検討される際は、これらの福利厚生制度を総合的に評価し、自身のキャリアプランと照らし合わせて判断されることをお勧めします。同業他社と比較しても競争力のある制度内容となっており、安定した企業で長期的なキャリアを築きたい方には理想的な選択肢の一つといえるでしょう。

出典：伊藤忠商事株式会社 有価証券報告書（2024年3月期）、伊藤忠商事株式会社 採用サイト