楽天グループ株式会社（以下、楽天グループ）は、ECサイト「楽天市場」をはじめとする楽天経済圏を構築する日本最大級のインターネットサービス企業です。グローバル展開を積極的に進める同社では、多様な働き方を支援する充実した福利厚生制度を整備しており、従業員のワークライフバランスと成長を重視した制度設計が特徴的です。本記事では、楽天グループの福利厚生制度について、住宅手当から退職金制度まで詳しく解説し、転職を検討している方が知っておくべきポイントをご紹介します。

楽天グループの会社概要

楽天グループは1997年の設立以来、インターネットを活用した革新的なサービスを次々と展開し、日本のEC市場をリードしてきました。現在では楽天市場を中核とする「楽天経済圏」を構築し、70を超えるサービスを連携させた独自のエコシステムを形成しています。従業員数は連結で約28,000名を超える規模となり、日本を代表するテクノロジー企業として成長を続けています。東証プライム市場に上場し、時価総額は約1兆円を超える規模を誇ります。

楽天グループの基本情報

項目	詳細
会社名	楽天グループ株式会社
本社所在地	東京都世田谷区玉川一丁目14番1号
設立年	1997年2月
業種	インターネットサービス業
事業内容	インターネットサービス、フィンテック、モバイル、その他
上場市場	東京証券取引所プライム市場

楽天グループの事業は大きく4つのセグメントに分かれています。インターネットサービス事業では楽天市場や楽天トラベルなどの主力サービスを運営し、国内最大級のECプラットフォームとして確固たる地位を築いています。フィンテック事業では楽天銀行、楽天証券、楽天カードなど金融サービスを幅広く展開し、楽天経済圏の中核を担っています。モバイル事業では2020年に本格参入した楽天モバイルにより、携帯キャリア事業を推進しています。その他の事業では楽天イーグルスやヴィッセル神戸などのプロスポーツチーム運営も手がけており、エンターテインメント分野でも存在感を示しています。

楽天グループの福利厚生制度の特徴

楽天グループの福利厚生制度は、グローバル企業としての多様性と革新性を重視した内容が特徴です。同社では「Empowerment」を企業文化の根幹に置き、従業員一人ひとりが最大限の力を発揮できる環境づくりを目指しています。そのため、従来の日本企業とは一線を画す独自の制度設計となっており、働き方の柔軟性や個人の成長支援に重点を置いた福利厚生を整備しています。特に、グローバルな人材を惹きつけるための国際的な基準に合わせた制度や、テクノロジー企業らしい先進的な働き方を支援する制度が充実しています。

住宅関連制度

楽天グループでは、従業員の住環境を支援するため、住宅手当制度を設けています。同社の住宅手当は月額最大5万円まで支給され、賃貸住宅に居住する正社員が対象となります。支給条件として、会社から住居までの通勤時間や距離に関する一定の基準が設定されており、効率的な通勤を促進する設計となっています。また、転勤に伴う住居移転の際には、引越し費用の補助制度も用意されており、全国各地の事業所への異動をサポートしています。社員寮については、独身寮を首都圏に複数箇所設置しており、新卒入社の従業員や地方からの転職者が利用できる環境を整えています。寮費は市場相場より安価に設定されており、若手社員の生活基盤確立を支援しています。

出典：楽天グループ株式会社 有価証券報告書（2024年12月期）、楽天グループ株式会社 採用サイト

健康・医療関連制度

楽天グループでは、従業員とその家族の健康維持を重視し、包括的な健康管理制度を整備しています。健康保険組合を通じて、法定を上回る手厚い医療費補助を提供しており、一般的な医療費の自己負担額を軽減しています。定期健康診断については、年1回の基本健康診断に加え、35歳以上の従業員には人間ドックの受診が推奨されており、費用は会社が全額負担しています。がん検診や婦人科検診などの特殊検診についても、費用補助制度を設けて早期発見・早期治療を促進しています。

メンタルヘルス対策としては、外部の専門カウンセリング機関と提携し、24時間365日利用可能な相談窓口を設置しています。ストレスチェックを年2回実施し、高ストレス者には産業医面談を推奨するなど、予防的な取り組みにも力を入れています。また、在宅勤務の普及に伴い、自宅での健康管理をサポートするため、健康アプリの提供や健康セミナーのオンライン開催なども積極的に行っています。社内には医務室を設置し、常駐の産業医と看護師が従業員の健康相談に対応する体制を整えています。

出典：楽天グループ株式会社 有価証券報告書（2024年12月期）、楽天グループ株式会社 採用サイト

休暇・働き方制度

楽天グループは、多様な働き方を支援する柔軟な休暇・勤務制度を導入しています。年次有給休暇は法定を上回る年間22日を付与し、有給取得率は約75％と高い水準を維持しています。同社では「有給取得推進月間」を設定し、部署単位での取得計画策定や上司からの積極的な取得推奨により、有給休暇の取得しやすい風土を醸成しています。特別休暇制度として、夏季休暇5日、年末年始休暇6日に加え、誕生日休暇、結婚休暇、忌引休暇などを設けており、ライフイベントに応じた休暇取得が可能です。

働き方の柔軟性では、コアタイムを10時から15時に設定したフレックスタイム制度を全社的に導入しており、従業員は6時から22時の範囲で勤務時間を自由に設定できます。在宅勤務制度については、2020年から本格的に拡充し、現在では週5日まで在宅勤務が可能となっています。育児や介護を理由とする場合には、完全在宅勤務も認められており、ワークライフバランスの実現を強力にサポートしています。また、サテライトオフィスを都内数カ所に設置し、通勤負担の軽減と働く場所の選択肢拡大を図っています。

教育・研修制度

楽天グループの教育・研修制度は、グローバル人材の育成と専門スキルの向上を重視した体系的なプログラムで構成されています。新卒入社者には約3ヶ月間の集中研修プログラムを実施し、楽天の企業文化「楽天主義」の理解から始まり、ビジネススキル、職種別専門知識まで幅広くカバーしています。中途入社者向けには、職歴や経験に応じたオリエンテーションプログラムを用意し、早期の組織適応を支援しています。

語学教育については、社内公用語が英語であることから、全従業員を対象とした英語研修プログラム「楽天英語化プロジェクト」を展開しています。TOEIC受験費用の全額補助、英会話レッスンの提供、海外語学研修制度など、多角的な語学習得支援を行っています。技術職向けには、最新のテクノロジートレンドに対応した専門研修や外部セミナー参加費用の補助制度があり、年間一人当たり最大30万円まで研修費用を支援しています。資格取得支援制度では、業務に関連する資格の受験費用や取得祝い金の支給を行い、従業員のスキルアップを奨励しています。管理職向けには、リーダーシップ研修やマネジメント研修を定期的に実施し、組織運営能力の向上を図っています。

楽天グループの各種手当・補助制度

制度・手当名	内容	対象者
住宅手当	月額最大5万円	賃貸住宅居住の正社員
交通費	実費支給（上限月額10万円）	全正社員
家族手当	配偶者月額1万円、子ども一人当たり月額5千円	扶養家族のいる正社員
資格取得支援	受験費用全額補助、取得祝い金最大10万円	全正社員
語学研修補助	TOEIC受験費用、英会話レッスン費用補助	全正社員
慶弔見舞金	結婚祝い金、出産祝い金、弔慰金等	全正社員
食事補助	社員食堂利用補助、ランチ券支給	全正社員
健康診断補助	人間ドック費用全額補助	35歳以上の正社員

楽天グループの各種手当制度は、従業員の多様なライフスタイルと成長意欲を支援する内容となっています。住宅手当は地域や物件により柔軟に対応し、東京都心部の高い住宅コストを考慮した手厚い支援を行っています。交通費については実費支給を基本とし、遠距離通勤者にも配慮した上限額設定となっています。家族手当は従来の日本企業的な制度を維持しつつ、多様な家族形態にも対応できるよう制度設計を工夫しています。特に注目すべきは語学研修補助で、グローバル企業としての競争力維持のため、従業員の英語力向上に積極的に投資している点が特徴的です。

楽天グループの退職金・年金制度

楽天グループの退職金制度は、確定拠出年金制度（DC制度）を中心とした現代的な設計となっています。従来の確定給付型年金制度から、2015年に確定拠出年金制度へ移行し、従業員の転職時のポータビリティと運用の透明性を重視した制度設計としています。会社側の拠出額は、職級と勤続年数に応じて月額2万円から8万円の範囲で設定されており、業界平均を上回る水準となっています。

確定拠出年金制度では、従業員が複数の運用商品の中から自分の投資方針に合ったポートフォリオを選択できる仕組みとなっています。投資教育セミナーを定期的に開催し、資産運用の基礎知識から実践的な投資手法まで学習機会を提供しています。また、退職一時金制度も併設しており、勤続3年以上の従業員には勤続年数と職級に応じた一時金が支給されます。退職金の支給額については、勤続10年で平均約200万円、勤続20年で平均約800万円程度となっており、長期勤続を奨励する設計となっています。制度の詳細な給付水準については、有価証券報告書において「従業員の処遇に関する事項」として適切に開示されており、透明性の高い運営を行っています。

楽天グループの福利厚生の評判・口コミ

楽天グループの福利厚生に対する従業員の評価は、転職口コミサイトにおいて総合的に高い水準を維持しています。特に高く評価されているのは、働き方の柔軟性と教育研修制度の充実度です。フレックスタイム制度と在宅勤務制度については、「ワークライフバランスが取りやすい」「子育てとの両立がしやすい」といった肯定的な声が多く見られます。また、語学研修制度については「英語力向上のサポートが手厚い」「グローバルな環境で成長できる」という評価が目立っています。

一方で、改善点として指摘されるのは、伝統的な日本企業と比較した場合の住宅手当や家族手当の水準です。「大手メーカーと比べると住宅手当が少ない」という意見も見られますが、これは楽天グループが外資系企業的な報酬体系を採用し、基本給に福利厚生相当分を含んだ設計としているためです。従業員満足度調査では、福利厚生全体に対する満足度は74％と高い水準を示しており、特に若手従業員からの評価が高い傾向にあります。健康管理制度については、産業医の充実や健康アプリの導入など、先進的な取り組みが評価されています。

他社との福利厚生比較

制度	楽天グループ	ソフトバンクG	サイバーエージェント
住宅手当	月額最大5万円	月額最大7万円	月額最大3万円
有給取得率	約75％	約70％	約65％
退職金制度	確定拠出年金＋退職一時金	確定拠出年金制度	確定拠出年金制度
在宅勤務	週5日まで可能	週3日まで可能	週5日まで可能
語学研修支援	TOEIC・英会話全額補助	一部補助あり	一部補助あり
研修費用補助	年間最大30万円	年間最大20万円	年間最大25万円

同業他社との比較において、楽天グループの福利厚生制度は、働き方の柔軟性と教育投資の手厚さで優位性を示しています。住宅手当の水準はソフトバンクグループに劣るものの、在宅勤務制度の利用可能日数や語学研修支援の充実度では業界トップクラスの内容となっています。特に、社内公用語が英語である楽天グループならではの語学研修支援は、他社では見られない手厚い内容となっており、グローバルキャリアを志向する人材にとって大きな魅力となっています。有給取得率も業界平均を上回る水準を維持しており、ワークライフバランスを重視する企業文化が数値に表れています。研修費用補助についても業界上位の水準であり、従業員の継続的な成長を支援する姿勢が明確に示されています。

楽天グループへの転職で注目すべき福利厚生ポイント

転職時の福利厚生チェックポイント

楽天グループへの転職を検討する際に、特に注意して確認すべき福利厚生のポイントがあります。まず、社内公用語が英語であることから、語学力に不安がある場合は語学研修制度の活用可能性を詳しく確認することが重要です。TOEIC受験費用の全額補助や英会話レッスンの提供内容、習得までの期間的な目安などを面接時に質問することをお勧めします。また、在宅勤務制度については、職種や部署によって適用条件が異なる場合があるため、希望する職種での具体的な利用実態を確認することが必要です。

住宅手当については、居住地域や通勤距離による支給条件の詳細を把握することが重要です。東京都心部での勤務を予定している場合、住宅コストと手当額のバランスを事前に計算し、生活設計に問題がないか検討することをお勧めします。確定拠出年金制度については、前職での企業年金制度からの移管手続きや、運用商品の選択肢について詳しく確認することが必要です。特に、投資経験が少ない場合は、投資教育プログラムの内容や個別相談の可否を確認しておくことが重要です。

入社後の手続きと利用方法

楽天グループ入社後の福利厚生利用開始については、制度により異なるタイミングで手続きが必要となります。住宅手当については、入社時に住居の賃貸借契約書などの必要書類を提出し、入社月から支給開始となります。ただし、転居を伴う場合は、新居での契約完了後の申請となるため、一時的に支給が遅れる可能性があります。確定拠出年金制度については、入社後1ヶ月以内に加入手続きを行い、運用商品の選択と拠出額の設定を行います。前職での企業年金がある場合は、移管手続きに2〜3ヶ月程度要する場合があります。

健康保険関連の福利厚生については、入社日から利用可能となりますが、人間ドックなどの特定健診については予約の関係で数ヶ月先になる場合があります。語学研修制度については、入社後すぐにTOEIC受験やオンライン英会話レッスンの申し込みが可能で、費用補助の申請は受講完了後に行います。在宅勤務制度については、直属の上司との相談の上、入社後1ヶ月程度の慣らし期間を経て本格利用が可能となるケースが一般的です。各種制度の詳細な利用方法については、入社時のオリエンテーションで詳しく説明されるほか、社内イントラネットで随時確認可能な体制が整っています。

まとめ

楽天グループの福利厚生制度は、グローバル企業としての特色を活かした先進的な内容となっており、特に働き方の柔軟性と継続的な学習支援に重点を置いた設計が特徴的です。住宅手当や各種補助制度は業界標準レベルを維持しながら、語学研修支援や在宅勤務制度など、現代的な働き方を支援する制度が充実しています。確定拠出年金制度を中心とした退職金制度は、転職時のポータビリティと運用の透明性を重視した現代的な設計となっています。

転職を検討される方にとって、楽天グループは特にグローバルキャリアを志向し、継続的なスキルアップを重視する方に適した環境といえます。社内公用語が英語であることから語学力向上のサポートが手厚く、多様な働き方を認める企業文化により、ワークライフバランスの実現が可能です。ただし、従来の日本企業と比較して住宅手当などの水準が異なる場合があるため、転職検討時には総合的な処遇条件を慎重に比較検討することが重要です。楽天グループの福利厚生制度を活用することで、グローバルな環境での成長とキャリア発展を実現できる可能性が高いといえるでしょう。