物流・機工事業で100年以上の歴史を持つ山九株式会社(以下、山九)。明石海峡大橋などの超重量物輸送から化学プラントの建設・メンテナンスまで幅広い事業を展開し、転職市場でも高い人気を誇る企業です。
この記事では、山九の平均年収や年代別・役職別の給与水準、福利厚生について、有価証券報告書などの公式データを基に詳しく解説します。山九への転職を検討されている方の参考になれば幸いです。
山九の会社概要
山九は1918年(大正7年)創業の総合物流・機工エンジニアリング企業です。本社を福岡県北九州市に構え、東証プライム市場に上場しています。
主要事業内容は物流事業と機工事業の2つの柱で構成されています。物流事業では港湾荷役、倉庫保管、陸上輸送などの総合物流サービスを提供。機工事業では製鉄所の高炉建設・改修、化学プラントの建設・メンテナンス、重量物・精密機器の輸送・据付を手がけています。
企業規模は連結従業員数約12,000名を超える大手企業で、2024年3月期の売上高は5,635億円を記録。国内外に多数の事業所を展開し、特に日本製鉄をはじめとする鉄鋼業界や化学業界との関係が深く、安定した事業基盤を有しています。
山九の平均年収
山九の最新の平均年収データを、有価証券報告書を基に3年間の推移と共にご紹介します。
年度 | 平均年収(万円) | 平均年齢(歳) | 平均勤続年数(年) | 従業員数(人) |
---|---|---|---|---|
2022年 | 601 | 40.4 | 14.4 | 12,467 |
2023年 | 599 | 40.5 | 14.4 | 12,235 |
2024年 | 616 | 41.0 | 14.8 | 12,235 |
出典:山九株式会社 有価証券報告書(2022年3月期・2023年3月期・2024年3月期)
2024年3月期の山九の平均年収は616万円となっており、前年から17万円の増加を記録しました。平均年齢は41.0歳、平均勤続年数は14.8年となっています。
同業他社との比較
運輸・物流業界における山九の年収水準を同業他社と比較してみましょう。
- 山九:616万円
- 日立物流:818万円
- 住友倉庫:790万円
- SGホールディングス:738万円
業界平均年収746万円と比較すると、山九は約130万円低い水準となっており、業界内では40位(全59社中)の位置にあります。ただし、一般的な給与水準(2022年分平均給与458万円)と比較すると、約158万円高い水準を維持しています。
山九の年収水準は業界大手と比較すると控えめな水準ですが、安定した事業基盤と福利厚生の充実度を考慮すれば、魅力的な条件といえるでしょう。
役職別年収
山九の役職別年収について、一般的な推定データをご紹介します。ただし、企業からの公式発表データではないため、あくまで参考情報としてご覧ください。
役職 | 推定年収(万円) | 備考 |
---|---|---|
係長・主任クラス | 公式データとしては非開示 | 推定650~750万円程度 |
課長クラス | 公式データとしては非開示 | 推定800~950万円程度 |
部長クラス | 公式データとしては非開示 | 推定1,000~1,200万円程度 |
山九では完全な年功序列制度を採用しており、管理職になるまでは給与の伸びが限定的です。社員の口コミによると、係長昇進時に年収550万円から650万円へと大幅にアップするケースが報告されています。また、課長補佐、課長へと昇格するたびに基本給が段階的に上がり、成果連動賞与も管理職係数で増額される仕組みとなっています。
課長以上への昇進には、業務に関連する1級程度の資格取得が求められる場合があり、年収の増加幅は10年単位で100万円~150万円程度が一般的です。
年齢別年収
山九の年齢別年収推移について、有価証券報告書のデータと業界統計を基にした推定値をご紹介します。
年代 | 推定年収範囲(万円) | 備考 |
---|---|---|
20代 | 400~500 | 新卒3年目で450万円程度 |
30代 | 500~600 | 30代前半510万円、後半570万円程度 |
40代 | 600~650 | 管理職登用により大幅アップ |
50代以上 | 650~700 | 55歳時が最高年収 |
山九では新卒直後の20代で年収388万円からスタートし、30代で562万円、40代で626万円、最高年収となる50代で660万円程度に到達します。特に28歳で年収600万円に達するケースも報告されており、これは月平均60時間の残業を含む水準となっています。
年収の特徴として、基本給は比較的低く抑えられており、残業代や各種手当を含めた総支給額で生活費を賄うスタイルが一般的です。また、年3回の賞与(6月、12月、5月の業績連動賞与)があり、特に5月の業績連動賞与の割合が大きくなっています。
地域別・事業所別年収
山九の地域別・事業所別の年収については、公式データとしては非開示となっています。ただし、社員の口コミ情報によると、以下のような傾向が見られます。
- 基本給の内訳に地域手当(約5万円程度)が含まれている
- 職場がA職場~D職場とランク分けされており、職場ランクによって給与水準が変動する
- 転職サイトの求人情報では、東京本社で450~700万円、関西エリア統括部(大阪)で600~900万円の年収レンジが提示されている
山九は全国6エリア(北海道・東北、関東、中部、関西、中国・四国、九州)に展開しており、各エリアの事業規模や取引先との関係性により、年収水準に一定の差が生じる可能性があります。ただし、これらは推定値であり、正確な地域別年収差については、面接や内定時の条件提示で確認することをお勧めします。
福利厚生・待遇
山九の福利厚生は業界内でも充実しており、社員からも高い評価を受けています。特に住宅関連の支援制度が手厚いことで知られています。
住宅・住まいサポート
- 独身寮:月額6,000円から利用可能(光熱費込み)、食堂完備
- 家賃補助:扶養家族を有する場合、家賃の最大70%を会社が補助(上限有り)
- 自宅取得支援金:2,400,000円(5年間)
- 自宅維持費:138,000円/年
- 地域手当:基本給の内訳に約5万円程度を含む
保険・年金制度
- 各種社会保険完備(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)
- 企業年金制度(確定拠出年金等)
- 退職金制度(勤続3年以上)
休暇制度
- 年次有給休暇:初年度より付与、最大20日(半日・時間単位取得可)
- 完全週休2日制:年間休日110~120日程度
- 有給積立制度:最大120日まで積立可能
- 育児休業(子が2歳になるまで延長可)・短時間勤務(小学校卒業まで可)
- 介護休業・短時間勤務、リフレッシュ休暇(永年勤続者)
その他の制度
- 資格手当:管工事施工管理技士、建築士、電気主任技術者等の資格に応じて支給
- カフェテリアプラン:余暇支援、生活支援、健康・医療費支援、教育・自己啓発支援から選択(年間24,000円~最大124,000円の補助)
- 奨学金支援制度:最大1,800,000円(10年)
- 結婚・出産祝い金、財形貯蓄制度、社員持株会制度
転職・中途採用情報
山九は中途採用に積極的で、物流・プラント・エンジニアリングの専門性を活かせる多様なポジションで募集を行っています。
採用状況
山九の中途採用は本社採用と支店採用の2つに分かれており、技術系と事務系の両方で幅広い募集を行っています。選考プロセスは「書類選考→1次選考→最終選考」と比較的シンプルで、2週間程度で結果が出るケースが多いです。
技術系職種:プラント建設、施工管理、設備メンテナンス、重量物輸送、電力関連設備など
事務系職種:物流企画、システム開発、輸出入業務、経理、人事、経営企画など
求める人材像
山九が求めているのは、意欲・チャレンジ精神旺盛でバイタリティに溢れる人材です。具体的には以下のような特徴を持つ人材を歓迎しています:
- 現場第一線で活躍することを厭わない人
- 海外展開にも臆することなく挑戦できる人
- 新しいことにも積極的に取り組める人
- メンタルやプレッシャーに強い人
- 生産性向上や効率化に貢献できる経験・実績を持つ人
面接では「なぜ山九なのか」という質問が頻繁に聞かれるため、山九独自の強みを理解し、入社後に何をしたいかを具体的に説明できる準備が重要です。
企業の将来性・成長性
山九の将来性を考える上で重要なのは、同社の独自のビジネスモデルと業界動向の両面から分析することです。
独自のビジネスモデルの強み
山九の最大の強みは、物流事業と機工事業を組み合わせた独自のビジネスモデルにあります。実際、2024年度の収益構造を見ると、物流事業で48.2%、機工事業で47.2%の売上を占めており、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築しています。
特に機工事業は利益率が高く、2025年第1四半期では物流事業の営業利益が68.6%増と大幅な伸びを見せており、収益性の向上が顕著に現れています。
業界動向を踏まえた成長戦略
Vision2030・中期経営計画として、山九は以下の重点戦略を掲げています:
- 収益力向上:費目別原価率管理の徹底、省人化・機械化の推進
- 人財強化:技術・技能・ノウハウの伝承による現場力強化
- 事業拡大:ワンストップサービスの強化、グローバル展開の推進
物流業界全体の市場規模は2023年度で22兆円を超える水準を維持しており、EC需要の拡大や高齢化による配送需要の増加など、長期的な成長ドライバーが存在します。山九は創業以来100年以上にわたって黒字経営を続けており、リーマンショック時でも最高益を記録するなど、高い収益安定性を誇っています。
リスクと課題
一方で、物流業界全体が抱えるドライバー不足や働き方改革への対応は山九にとっても重要な課題です。ただし、同社は早期からDX推進や業務効率化に取り組んでおり、これらの課題への対応力は比較的高いと考えられます。
まとめ
【山九の年収まとめ】
- 平均年収:616万円(2024年3月期)
- 年齢別目安:20代400~500万円、30代500~600万円、40代600~650万円、50代650~700万円
- 昇進による年収アップ:係長昇進時に550万円→650万円へと大幅アップ
- 福利厚生:業界トップクラスの充実度、特に住宅関連支援が手厚い
【転職検討者へのアドバイス】
山九への転職を検討されている方は、まず同社の独自のビジネスモデルと企業文化を理解することが重要です。年収面では業界平均よりもやや控えめですが、安定性と福利厚生の充実度を考慮すると魅力的な条件といえます。
特に以下のような方には適している企業です:
- 物流とエンジニアリングの両分野でキャリアを積みたい方
- 大手メーカーとの長期的な関係性の中で安定して働きたい方
- 海外展開にも興味があり、グローバルな視点でキャリアを考えたい方
- 充実した福利厚生の中で長期的に働きたい方
転職をお考えの際は、山九の中期経営計画や最新の業績動向も確認し、自身のキャリア目標と照らし合わせて検討されることをお勧めします。同社の安定性と成長性を踏まえると、長期的なキャリア形成には適した環境が整っている企業といえるでしょう。