「退職理由を聞かれたとき、正直に言っていいのかどうか分からない」と感じている第二新卒の方は多いのではないでしょうか。人間関係のつらさや給与への不満がリアルな理由であっても、面接でそのまま打ち明けることにためらいを覚えるのは自然なことです。実は、適切な「言わない」判断と伝え方の工夫が、転職の合否を大きく左右するケースがあります。
この記事では、退職理由のどこまでを正直に話すべきか、何を言わない方がいいのか、そして第二新卒ならではの上手な言い換え方を、場面別の例文もあわせて解説します。転職活動を有利に進めるための実践的な内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
退職理由は正直に言わなければいけないのか
転職面接で退職理由を問われると、「嘘をついてはいけない」という意識が働く一方で、「全部話してしまうのも不安」という気持ちが交錯しがちです。まずは法律の観点と、面接での心構えを整理しておきましょう。
法律上、退職理由を伝える義務はない
労働基準法第22条は、退職時に労働者から請求があった場合に使用者が証明書を交付する義務を定めた条文です。解雇の場合には解雇理由の明示が義務付けられていますが、これはあくまで使用者側の証明義務であり、労働者が退職理由を会社に説明しなければならないという義務を定めたものではありません。
つまり、勤めている会社に退職の意思を伝える際、本音の退職理由を明かす法的な義務はありません。
労働者の自由を守るため、仕事を辞める権利は法律(民法第627条)で保障されており、2週間以上前に退職の意思を伝えれば退職は可能であり、理由を詳細に伝える義務はありません。
一方で、転職先の面接では話が別です。面接での退職理由は採用の判断材料になるため、「何も言わない」という選択は通じません。伝える内容を工夫することが必要です。
実際に本音を言わない人はどれくらいいるのか
複数の調査によると、退職経験者のうち半数前後が「本当の退職理由を会社に伝えなかった」と回答しています。エン・ジャパンの2024年調査(エンゲージ、有効回答4,658名)では54%、同社の別調査(エン転職、2024年)では44%、2022年調査では43%がそれぞれ本当の理由を伝えなかったと回答しており、調査によって数値は異なります。
これほど多くの人が本音と建前を使い分けているという事実は、退職理由の「言い方を考える」ことが転職活動において一般的な対応であることを示しています。
また、別の調査では「退職した本当の理由を会社に伝えましたか?」という質問に対し、上司へは「伝えた」が47.0%、「伝えなかった」が53.0%。人事担当者へは「伝えた」が35.9%、「伝えなかった」が64.1%という結果も出ています。
こうしたデータを見ると、「正直に言わなければいけない」というプレッシャーは必要以上に感じなくてもよいことが分かります。ただし、嘘をつくことと「言い方を工夫する」ことは別物です。この違いを理解することが重要です。
退職理由を正直に言わない方がいいケース
退職理由にはさまざまなものがありますが、面接でそのまま口にすることでかえって評価を下げてしまう内容があります。どのようなケースが「言わない方がいい」に当てはまるのかを確認しておきましょう。
会社・組織への不満が退職理由のとき
待遇が悪い、将来性を感じない、人間関係が良くないなど、会社や組織への不満が退職の理由なら、伝えないほうがいいでしょう。本音を伝えると上司や周囲と摩擦が生じるリスクが高く、引き継ぎや退職までの業務がやりにくくなるかもしれません。
面接の場でも同様です。
会社に対する批判や不満を「退職理由」にすると、面接官は「自社でも同じ理由で退職をするのでは?」と不信感を持ちます。
面接官は応募者が自社で定着してくれるかどうかを見ているため、不満をそのまま話すと「またすぐ辞めるのでは」という印象を与えかねません。
人間関係やパワハラを退職理由にするとき
人間関係やパワハラはどの会社でも起こりうる可能性があるため、退職理由としては基本的に話さない方が無難です。人と合わないことを理由に退職を考える「協調性の低い人材」だと判断されかねません。もし答えるのであれば、特定の個人ではなく、会社の風土や仕事の進め方といった話に転換してください。
実際に、複数の調査で「人間関係が悪い」は伝えなかったホンネの退職理由として最も多い項目として挙げられています。第2位は「給与が低かった(低い)」、第3位以降には「会社の将来性への不安」「社風や風土が合わなかった」などが続いています(調査によって順位は異なります)。
多くの人が「人間関係」を本音として抱えながら、面接ではそのまま話さない選択をしているということです。
仕事への不満を退職理由にするとき
自分のスキルが生かせない、モチベーションが湧かない、業務が単調といった仕事への不満も退職理由として挙げないほうが無難です。「違う部署に異動させるから」と引き止められ、交渉が長引くパターンも考えられます。
退職理由で絶対に避けるべきこと
言わない方がいい退職理由がある一方、やってはいけない伝え方も存在します。正直に言わない工夫をする際も、次のポイントは必ず守るようにしてください。
嘘の退職理由を作り上げない
面接官からの印象を良くするために、嘘の退職理由を作るのは逆効果です。その場ではいいかもしれませんが、他の質問と矛盾が発生すれば「一貫性のない人だな」「適当なことを言っているのではないか?」と、それだけで信用をなくしてしまいます。
また、場合によっては、内定後にリファレンスチェック(前職への照会)が行われることもあります。自社と応募者のミスマッチを防ぐためにも、事実は正直に、しかし伝え方を工夫して話しましょう。
嘘をつくことと、言い方を工夫することは別物です。前者はリスクを生み、後者は伝え方の戦略です。
前職や上司の悪口を言わない
退職理由を伝える際に、前職の会社や上司の悪口を言うのは絶対に避けるべきです。面接官は「この人は次の職場でも不満を持ってすぐに辞めてしまうのでは?」と疑念を抱く可能性が高くなります。どんなに前職に問題があったとしても、企業側としては「うちの会社でも同じように不満を持たれるかもしれない」と考えてしまいます。
曖昧すぎる退職理由を使わない
退職理由を曖昧にすると、「何か隠しているのでは?」と疑われることがあります。特に業界内での転職の場合、前職の情報が採用担当者に伝わることもあるため、虚偽の情報を伝えるのは避けるべきです。
「なんとなく合わなかった」「一身上の都合です」と答えるだけでは、面接官に不信感を与えてしまいます。曖昧さと正直さのバランスが大切です。
第二新卒が退職理由を伝えるときの基本の考え方
第二新卒は社会人経験が3年未満であることが多く、「なぜそんなに早く辞めるのか」という視点で面接官に見られがちです。そのため、退職理由の伝え方には特有の工夫が必要です。
退職理由2割、転職でやりたいこと8割の配分を意識する
第二新卒が転職理由を答えるときに理想的な配分は、退職理由2割:転職によって実現したいこと8割です。企業が転職理由や退職理由を面接で聞くのは、応募者が「自社に定着する可能性」と「入社後に活躍する可能性」の2つをみるためです。
つまり、退職の経緯はコンパクトに話しながら、「この会社で何を実現したいのか」という前向きな展望を中心に据える構成が理想的です。
ネガティブな本音はポジティブに言い換える
例えば「給料が低かったから辞めた」とそのまま伝えると、「待遇の良い会社があれば、また転職するのでは?」と思われかねません。そこで、「これまでの経験を活かし、成果が適正に評価される環境で成長したいと考えました」と言い換えることで、成長意欲のある前向きな転職理由に変えられます。
「上司と合わなかった」という理由も、そのまま伝えると「人間関係の問題を起こしやすいのでは?」と疑われる可能性があります。しかし、「よりチームワークを重視し、協力しながら成果を出せる環境で働きたいと考えました」と言い換えれば、求める職場環境を前向きに伝えられます。
「退職理由→改善の努力→転職への決意」の流れで話す
面接官は、退職を決意するまでに自分で問題解決を試みたかどうかも見ています。
退職に至った不満や不安を自分で改善する努力をしたかという点をチェックするために退職理由を聞いているため、あえてマイナス評価になることは最初から言わない方が賢明ですが、不満ばかりで自ら動こうとしていないという部分がないかも確認しています。
「〇〇という課題を感じ、社内で改善を試みましたが難しかったため、より自分の強みを活かせる環境に移ることを決意しました」という構成にすることで、自分の主体性や成長意欲をアピールできます。
退職理由の本音別|第二新卒向けの言い換え例
ここでは、第二新卒が抱えやすい本音別に、面接での伝え方の言い換え例を紹介します。実際の言葉を参考にしながら、自分の状況に合わせてアレンジしてみてください。
本音「人間関係が合わなかった」のとき
面接でのNG例として「上司と性格が合わず、毎日ストレスを感じていました」という直接的な表現があります。これは特定の個人への不満に聞こえるため避けるべきです。
「パワハラ」「いじめ」という直接的な言葉や、特定の個人への不満は避けましょう。「個人の尊重よりもトップダウンの指示が優先される環境だった」のように組織風土や文化とのミスマッチとして伝え、「自分はどのような環境で働きたいのか」という前向きな希望につなげるのがポイントです。
言い換え例としては次のような表現が考えられます。「前職では業務の進め方においてトップダウンの文化が強く、自分から提案する機会が限られていました。個人の意見を尊重し、チームで意見を出し合いながら仕事を進める環境で自分の力を試したいと考え、転職を決意しました。」
本音「給料が低かった」のとき
給与への不満をそのまま話すことは、「より高い給与を提示されたらまた転職するのでは」という印象を与えます。
言い換え例としては、「前職では成果と評価の関係が不透明で、モチベーションを維持しにくい面がありました。成果が適切に評価される仕組みの中で、自分のパフォーマンスを高めていきたいと考え、転職活動をはじめました。」のような形が有効です。
本音「仕事内容がイメージと違った」のとき
第二新卒に多い退職理由のひとつです。
「採用時と入社後で条件や業務内容が違っていた」といった場合でも、前職の会社を非難するような言い方は面接官を不快にさせ、自分の評価を下げてしまいます。
言い換え例として参考になるのが、こんな伝え方です。
「前職では生産管理採用で内定を頂きましたが、実際に配属されたのは技術営業部門でした。お客様のニーズなど理解を深めることができ、良い機会を得られたと思っています。しかし、やはり希望する仕事がしたいと思い部署異動を願い出ましたが、将来的にも異動は難しいとのことでした。より自分の実力が発揮できる環境で働きたいと思い、転職を決意いたしました。」
ネガティブな面を認めながらも、前向きな姿勢と自分の意思で動いた経緯を示している点がポイントです。
本音「会社の将来性が不安だった」のとき
会社の規模縮小や経営状況の不安を退職理由にする場合、業績批判に聞こえないよう工夫が必要です。「業績が厳しく、このままでは成長できないと感じました。より安定した環境でキャリアを積みたいと思いました」といった言い方は、やや批判的に聞こえる可能性があります。
代わりに、「長期的なキャリアを考えたとき、より成長市場に身を置きたいという思いが強くなりました。今後は〇〇分野でスキルを積みながら、会社の成長にも貢献できる環境を求めています。」というように、将来の展望に焦点を当てた言い方が効果的です。
会社を辞めるときの退職理由|上司への伝え方も工夫を
転職先の面接だけでなく、現職の上司や人事担当者への退職理由の伝え方も重要です。円満に退職するための準備として、押さえておきましょう。
退職理由がネガティブな場合、正直に伝えてしまうとトラブルになる可能性があります。もし退職日が変更になれば、転職先へ迷惑をかけることになりかねません。
円満に退職したいなら、意思を明確に示したうえで、感謝を伝えつつ、「夢をかなえるため転職したい」のような前向きな理由を用意するか、「一身上の都合」の言葉を上手に使いましょう。
また、上司への伝え方として有効とされるのが、「ライフイベント」や「体調面」などの個人的な事情を理由に使う方法です。複数の調査で、会社に伝えた退職理由として「体調不良」「結婚・家庭の事情」が上位に入ることが確認されています。病状や家庭の事情は、会社側から深く聞きにくい内容であるため、引き止めを受けにくい側面があります。
もちろん、架空の理由を作ることは避けるべきですが、「新しいキャリアを築きたい」という前向きな表現や、「一身上の都合」はシンプルかつ合理的な伝え方として一般的に受け入れられています。
意固地に理由を言わないことも、言わない方がいい理由を言うことも、どちらも円満退社には結びつかなさそうです。バレた時に信頼を損なうようなうそをつくこともリスクが高いため、あくまでも前向きな理由を伝える、または自分の力ではどうにもできない回避が不可能な理由を伝えることが最適な方法だと考えられます。
退職理由を上手に伝えるための準備ステップ
退職理由を面接でスムーズに話せるようになるには、事前の準備が欠かせません。次の手順で整理しておくと、本番でも落ち着いて伝えられます。
- 本音の退職理由を紙に書き出す(給与・人間関係・仕事内容など、思いつくまま正直に)
- 書き出した理由を「だから、自分はどうしたいのか?」という視点でポジティブに言い換える
- 言い換えた理由が、志望企業での仕事内容やビジョンとつながるストーリーに整える
- 「退職理由(2割)→転職で実現したいこと(8割)」の配分で話す構成を組み立てる
- 声に出して練習し、他の質問(志望動機・自己PR)との矛盾がないか確認する
まずは正直に、あなたが退職を考えた理由を書き出してみましょう。「給与が少ない」「残業が多い」「人間関係が煩わしい」「会社の将来性が不安」などです。書き出したネガティブな理由は、「だから、どうしたいのか?」という視点でポジティブな言葉に言い換えてみましょう。
退職理由の整理と言い換えは、一人でやると行き詰まることもあります。転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談すると、客観的な視点からフィードバックを得ながら準備できるため、特に第二新卒の方には活用をおすすめします。
第二新卒の転職では、エージェントを活用することで退職理由の伝え方だけでなく、企業選びや面接対策まで幅広いサポートを受けられます。

第二新卒の転職エージェントを活用して退職理由の準備を万全にしよう
退職理由の言い方に自信が持てない方や、ネガティブな経緯をどう言い換えればよいか迷っている方には、転職エージェントへの相談が非常に有効です。第二新卒に特化したエージェントでは、面接で実際に使える言い換えフレーズのアドバイスや、選考企業ごとの傾向に合わせた準備をサポートしてもらえます。無料で利用できるサービスがほとんどなので、まずは一度相談してみることをおすすめします。
第二新卒向けの転職エージェント選びについては、こちらの記事が参考になります。

まとめ|退職理由は「正直に言わない」ではなく「工夫して伝える」
ここまで、退職理由をどこまで正直に話すべきか、そして上手に伝えるための考え方と例文を紹介してきました。最後に要点を整理しておきます。
- 退職理由を伝える法的義務はないが、面接では内容と伝え方の工夫が合否に影響する
- 人間関係・給与・仕事内容への不満などネガティブな本音はそのまま話さず、ポジティブな言い換えが基本
- 嘘をつくことはリスクが高い。「言わない」「言い換える」ことと「嘘をつく」ことは別物と理解する
- 第二新卒は退職理由2割・転職で実現したいこと8割の配分を意識し、前向きなストーリーで話す
- 準備に不安がある場合は、第二新卒向けの転職エージェントに相談するのが近道
退職理由に悩んでいる方は、まず本音を書き出すところから始めてみてください。そこから言い換えを積み重ねていくことで、面接官に好印象を与える退職理由が自然と完成していきます。
第二新卒の転職活動全体の進め方については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

第二新卒向けのエージェント比較については、こちらの記事もご活用ください。



