「英語力があれば転職に有利」とはよく耳にするけれど、実際にどのくらいのレベルが必要なのか、よくわからないまま不安を抱えていませんか。TOEICのスコアを上げることに必死になる一方で、「そもそも自分の志望業界に英語は必要なのか」という根本の部分が曖昧なまま、転職活動に踏み出せずにいる方も多いはずです。
元人事担当として複数の企業採用を見てきた立場から言えば、「英語力×転職」には、世間に広まっている誤解がいくつかあります。この記事では、転職市場における英語力の実態と、自分の状況に応じた活かし方を具体的に整理します。読み終えたころには、「自分に今必要な英語力はこれ」とスッキリわかるはずです。
転職市場で英語力はどう評価されているのか
「英語ができると転職に有利」は本当でしょうか。結論から言えば、「有利になるかどうか」は業界・職種・ポジションによって大きく異なります。英語力が必須要件になる求人もあれば、あくまで「あれば尚可」止まりの求人もあり、一律に「英語力=武器」とは言い切れないのが現実です。
IIBCの「英語活用実態調査2019」(TOEICを活用している企業・団体を対象とした調査)によると、「今後のビジネスパーソンにとって重要な知識やスキル」として「英語」を挙げた企業の割合は82.6%にのぼり、コミュニケーションスキルと並んで多くの企業で重要視されていることがわかります。 また同調査では、人材採用時や配属・異動時に一定の英語能力が求められると回答した企業の割合が、将来的に大幅に増加すると予測されていました。グローバル化の波は、確実に採用基準にも影響を与えています。
一方で、採用の現場から見ると「英語力を磨きたいから転職したい」という動機だけを前面に出す候補者は、意外なほど敬遠されます。 英語面接で不採用になったケースで採用企業側からのフィードバックとして最も多く聞かれるのは「言いたいことがよくわからなかった」というものです。 英語力はあくまでビジネスの道具であり、「英語でこの仕事をどう成果につなげるか」という文脈で語れることが採用担当には刺さります。
企業が求めるTOEICスコアの目安
英語力を客観的に示す指標として、多くの企業がTOEICスコアを参照しています。では、どのくらいのスコアが求められているのでしょうか。
各種調査や求人市場の傾向では、企業が従業員に求める英語力としてTOEICの点数「600〜700点」を目安とするケースが多く見られます。 ただし、これは「平均的な水準」であって、求めるレベルはポジションによって異なります。以下は、転職市場における大まかな目安です。
一般的にTOEICで500点以上あれば英語を補助的に使う職場への転職を目指せる素地があるといえます。 一方、外資系企業や英語を日常的に使うグローバルポジションを狙うのであれば、700点以上が現実的な目安になります。
- 500点台:英語メール・簡単な会話が求められるポジションで「あれば尚可」として評価される
- 600〜700点:日系グローバル企業・海外取引のある部署の一般職で最低ラインとして機能しやすい
- 700〜800点:外資系企業の一般職、貿易・海外営業職でほぼ必須ラインとして設定されることが多い
- 800点以上:外資系の管理職・コンサルタント・法人営業など、英語で折衝・プレゼンが必要なポジションで強いアドバンテージになる
スコアはあくまで「入口のふるい」として使われます。面接では英語での口頭コミュニケーション能力も問われるため、スコアさえ高ければ通過できるわけではありません。この点は、後述の「面接で英語力をどう示すか」の節で詳しく触れます。
英語力が特に求められる業界と職種
英語力の重要度は、業界・職種によって驚くほど差があります。「IT企業だから英語は必要」「メーカーだから不要」といったざっくりとした思い込みは一度外して考えましょう。英語が武器になるかどうかは、企業の事業領域と担当業務によって決まります。
英語力が選考の評価軸になりやすい業界
以下の業界では、英語力が選考過程で明確な評価軸になることが多いです。特に外資系・グローバル展開中の企業では、入社後すぐに英語を使う場面があるため、採用側も本気で確認してきます。
- 外資系コンサルティング・金融:社内公用語が英語の場合もあり、800点以上を目安にネイティブとの会議対応が求められることも
- 商社(総合・専門):海外拠点・バイヤーとのやり取りが多く、英語メール・交渉力が実務直結
- グローバルメーカー(自動車・電機・化学):海外工場・R&D拠点との連携で技術英語が必要になるケースが増加中
- IT・テック(外資系SaaS・スタートアップ):プロダクトドキュメント・Slackでのやり取りが英語で行われる職場も珍しくない
- 航空・ホテル・ブライダル(インバウンド対応):接客・案内・クレーム対応など現場での英会話力が直接評価される
逆に、国内市場のみを対象とした中小企業、行政・公共系、地域密着型のサービス業では、英語力は選考の主要評価軸にはなりにくいです。英語力があってもそれを活かせないポジションに転職してしまうと、せっかく積んだスキルが宝の持ち腐れになりかねません。
英語力が差別化につながりやすい職種
特定の職種では、英語力がそのまま市場価値の差別化につながります。人事採用の経験から見ると、同じ専門スキルを持つ候補者が2人いたとき、英語力のある方が優先される場面は非常に多くあります。
- 海外営業・グローバルアカウントマネージャー:英語力+業界知識で希少性が高まる
- マーケティング(グローバル担当):英語での市場調査・海外本社とのレポーティング
- エンジニア(外資系・スタートアップ):ドキュメント・コードレビューが英語環境の場合に重宝される
- 購買・調達:海外サプライヤーとの価格交渉・契約書対応
- IR・広報(上場企業):英語での投資家向け資料作成・説明
一方で、「経理」「総務」「法務」などバックオフィス職の場合、日系企業では英語力が採用の決め手になることは少ないです。ただし外資系企業に限っては、バックオフィスであっても英語力が必須になるケースがあります。志望する企業のタイプをまず明確にしておくことが先決です。
よくある誤解|「英語力だけ」では転職はうまくいかない
ここで一度立ち止まって考えてほしいのが、「英語ができれば転職に勝てる」という誤解です。元人事担当として正直に言うと、英語力単体を武器にして転職活動に臨んでくる候補者は、想像以上に選考で苦戦します。
企業側はビジョンに共感し、長く一緒に働いてくれる人を求めており、あくまでビジネスツールである英語だけを魅力と捉えられては採用には至らないのです。 「英語を伸ばしたいから外資系に転職したい」という動機は、採用担当の目線では「成長コストをかけて採用する理由がない」と映ります。
英語力はあくまで「専門スキル×英語力」の掛け算で評価されます。たとえば、営業経験5年のうえでTOEIC750点なら「海外営業として即戦力」と映りますが、TOEIC900点でも業務経験が薄ければ「語学留学を検討してみては」という結論になるケースも実際にあります。
英語力は「掛け算の係数」であって、掛けられる数字(専門スキル)がゼロであれば結果もゼロです。この視点を忘れずに転職戦略を立てることが、中途採用での成功の鍵になります。
英語力を転職活動でどう示すか|面接・書類での伝え方
「英語力があります」と言うだけでは採用担当には伝わりません。書類選考・面接それぞれで、どう英語力を具体的にアピールするかを整理しておきましょう。
職務経歴書での書き方
職務経歴書でありがちな失敗は、「TOEIC○○点。ビジネス英語に対応できます」の1行で終わらせてしまうことです。採用担当は毎日数十通の書類を見ており、この書き方では印象に残りません。
効果的な書き方は、英語を「どの場面で」「何のために」「どんな成果をもって」使ったかをセットで記載することです。たとえば次のような形です。
- 「海外サプライヤー5社との価格交渉を英語メールおよびビデオ会議で担当。年間調達コストを前年比8%削減」
- 「アメリカ本社へのWeekly Reportを英語で作成・提出。英語での質疑応答も対応(TOEIC 780点)」
- 「社内マニュアルの英語化プロジェクトをリード。海外スタッフ12名への研修も英語で実施」
スコアよりも「実際に何をやったか」の方が採用担当には響きます。TOEICのスコアは根拠として添えるにとどめ、実績の具体性で差別化するのが鉄則です。
英語面接に向けた準備
外資系や英語必須のポジションでは、面接の一部または全部が英語で行われることがあります。「スコアはあるけど話すのが不安」という方は多いですが、面接官が見ているのは流暢さよりも「論理的に自分の考えを伝えられるか」です。
ビジネス英語では要件を絞り、根拠を数字で示し、結論から話すことが求められます。 日本語の面接と同じPREP法(結論→理由→具体例→結論)の構造で話せれば、ネイティブ並みの流暢さがなくても十分に評価されます。
準備の手順として、まず自己紹介(2〜3分)・転職理由・志望動機・過去の実績を英語でスクリプト化し、声に出して練習することをおすすめします。最初から完璧に話そうとする必要はなく、「自分の言いたいことが伝わる英語」を目指すことが現実的です。
英語力が低くても転職できる?現実的なシナリオ
「英語力がまだ低い。転職は諦めるべきか」と不安に思う方もいるはずです。結論から言えば、英語力が低い状態でも転職できるシナリオは十分あります。ただし、戦略が重要です。
まず考えたいのは、「英語を使う仕事に転職したいのか」「英語力を使える環境に身を置きたいのか」の違いです。前者であればある程度のスコアは必要ですが、後者であれば「入社後に伸ばす姿勢と素地がある」ことを示せれば、英語力が現時点で低くても採用に至るケースがあります。特に成長フェーズのスタートアップや、研修制度が整った大手グローバル企業ではその傾向が見られます。
また、転職活動と並行して英語力を高める動きを見せること自体が、採用担当へのアピールになります。「現在TOEICに向けて学習中です(現在650点、3ヶ月後700点を目標)」のように進捗を示せると、主体性と成長意欲の証拠として機能します。
英語力を補う実績の示し方
英語スコアが低い段階では、次の切り口で補完的なアピールをするのが有効です。
- 英語学習への投資実績(英会話スクール・オンライン学習・海外経験など)を明示する
- 業界専門知識・業務スキルの深さを前面に出し、英語は「伸ばせる素地がある」として位置づける
- 英語を部分的に使った経験(英語メール数件・海外出張同行など)があれば小さくても具体的に記載する
- TOEIC以外の資格(英検・IELTS・TOEFLなど)を持っている場合は積極的に記載する
英語力がゼロではないことを示すことと、専門スキルをしっかり伝えることの二段構えで書類・面接に臨みましょう。採用担当は「入社後に化けるかどうか」を常に考えています。
英語力を活かした転職を成功させるために今すべき行動
英語力と転職の関係を整理したところで、「では次に何をすべきか」を具体的に考えましょう。闇雲に英語の勉強を続けるより、転職の方向性を定めてから逆算する方が圧倒的に効率的です。
ステップ1|目指すポジションの英語要件を確認する
転職サイトで志望職種・業界の求人を10〜20件チェックし、「英語力」の要件欄に何が書かれているかをまず確認しましょう。「TOEIC600点以上歓迎」なのか「英語でのプレゼン必須」なのかによって、準備のゴール設定がまったく変わります。
求人票にそこまで詳細な情報がなく、英語力を生かせるのか不安になる状況もあります。 こうした場合は転職エージェントを通じて企業の実態を確認する方法が有効です。エージェントは企業の採用担当者と直接パイプを持っているため、「英語をどの程度使う職場か」を具体的に聞き出してくれます。
ステップ2|スコアアップとアウトプット練習を並行する
TOEIC対策(インプット)だけに偏らず、実際に英語を使うアウトプット練習を並行することが大切です。スコアが高くても話せない候補者を採用担当として何人も見てきた経験から、「試験英語と実務英語は別物」と確信しています。
週に1〜2回のオンライン英会話を継続するだけでも、面接時の英語対応力は大きく変わります。特に転職面接でよく聞かれる「自己紹介」「職務経歴の説明」「志望動機」を英語で話せるよう、具体的なシナリオで練習しておくことをおすすめします。
ステップ3|自分の市場価値を転職エージェントで客観確認する
英語力と専門スキルを組み合わせたときの市場価値を、客観的に把握することも重要です。自己評価と市場評価がズレていると、求人選びで失敗します。
転職エージェントの初回面談は無料で利用でき、「現在の英語力でどの求人に応募できるか」「どのポジションを目指すと年収アップしやすいか」といった具体的なフィードバックがもらえます。英語力の現在地と転職市場における立ち位置を把握してから、次の準備に進むのが最も合理的なルートです。
転職エージェントを活用して英語力を活かす求人を見つけよう
英語を使える環境に転職したいと思っても、どの求人が自分に合うか一人で見極めるのは難しいものです。英語力の要件や実際の業務内容は、求人票だけでは伝わらないことが多く、入社後のギャップにつながりやすいポイントです。転職エージェントを活用して、自分の英語レベルと専門スキルに合った求人を絞り込んでいきましょう。

まとめ|英語力と転職の正しい活かし方
英語力は転職において確かに強みになりますが、「専門スキルとの掛け算」でこそ威力を発揮します。スコアを追うだけでなく、自分の経験と組み合わせてどう語るかが、採用担当の評価を大きく左右します。まず転職エージェントに相談し、自分の市場価値を確認するところから始めましょう。
- 企業が求める英語力の目安はTOEIC600〜700点が多く見られるが、ポジション・業界によって大きく異なる
- 英語力は「専門スキル×英語力」の掛け算で評価される。英語単体のアピールは採用担当に響きにくい
- 職務経歴書では「どの場面で・何のために・どんな成果で英語を使ったか」を具体的に記載する
- 英語力が低い段階でも、成長意欲の証拠と専門スキルの深さで転職できるシナリオは十分ある
- 次のアクションは、転職エージェントへの相談で自分の市場価値と英語要件の実態を把握すること

