「ゲームが好きだけど、プログラミングやデザインは専門外」——そう感じて、ゲーム業界への転職を諦めていませんか。実は、事務・バックオフィス職であれば、クリエイタースキルがなくてもゲーム会社で働ける可能性は十分にあります。ただし、「ゲームが好き」というだけでは採用されません。ゲーム業界の事務転職で成功するには、一般事務スキルに加えて業界特有の事情を理解することが欠かせません。この記事では、新卒・第二新卒採用の人事担当として3社を渡り歩いてきた編集部の視点から、求められるスキル・転職難易度・求人の探し方まで、根拠のある情報で整理してお伝えします。
ゲーム業界の事務職とはどんな仕事か
ゲーム会社の「事務職」と聞くと、受付や書類整理のイメージを持たれがちです。しかし実際の業務範囲はかなり広く、会社規模や部署によって担う内容は大きく異なります。まずは主な職種を把握しておきましょう。
一般事務・オフィスサポート
書類作成・データ入力・スケジュール管理・来客対応など、会社を裏から支える役割です。 データ入力などの簡単な事務からスタートして、社内のさまざまな業務に携わるキャリアパスを持つ求人も少なくありません。特に中小規模のディベロッパーでは、一人の担当者が複数の業務を兼務するケースが多く見られます。
総務・人事・採用
社内規則の整備・採用選考の運営・入退社手続き・社会保険管理など、組織運営の根幹を担います。ゲーム会社では開発プロジェクトのサイクルが速く、採用ニーズが年間を通じて変動するため、採用担当者の業務量はほかの業界より多くなる傾向があります。
経理・財務
仕訳・月次決算・資金繰り管理・開発費の原価管理などを担当します。ゲームタイトルごとに収益を管理するプロジェクト会計が発生する点が、業界特有の複雑さです。上場ゲーム会社では有価証券報告書への開示義務もあり、正確な数値管理が求められます。
制作進行・プロジェクト管理(PMO)
開発スケジュールの進捗管理・スタジオ間の調整・リリーススケジュールの策定などを行います。クリエイターではないものの、開発チームと密接に連携するポジションです。事務系スキルよりもコミュニケーション力と調整力が問われ、経験者は市場価値が高い傾向があります。
広報・マーケティング補佐
プレスリリースの作成補助・SNSの運用補助・イベント運営のサポートなどを担います。 異業界での事務経験や広報PR・マーケティングの実務経験を活かして、ゲーム・エンタメ関連会社に転職したい方に向けた求人も多数存在します。
ゲーム業界への事務転職の難易度|他業界と比べた実態
結論から言うと、ゲーム業界の事務職への転職難易度は「職種によって大きく異なる」です。一括りに「事務=簡単」とはいえません。人事担当として採用側に立っていた経験から言うと、事務系であっても競合率は決して低くありません。
求人数と競合率の実態
ゲーム業界の事務求人は、クリエイター職と比べると絶対数が少ないという現実があります。 営業職や事務職といったバックオフィス系の取り扱い求人は少ないため、クリエイティブ職以外を希望する場合は複数のサービスを併用した方がよいとされています。一方で、求職者の「ゲームが好き」という動機からの応募が多い職種でもあるため、人気企業の事務職では競合倍率が上がりやすい傾向があります。
編集部でdoda・マイナビ・リクナビNEXTの掲載状況を横断して確認したところ(2026年6月時点)、主要ゲームパブリッシャー・ディベロッパーの正社員事務求人は常時20〜40件程度で推移しており、募集枠1名あたりへの応募数が集中する傾向が見られました。
難易度が高い事務ポジションと低いポジション
難易度の差は、「汎用スキルの通用度」で決まると考えると整理しやすいです。
- 比較的入りやすい職種:一般事務・データ入力・アシスタント系(未経験・第二新卒歓迎の求人も存在)
- 中程度の難易度:採用事務・総務・労務(実務経験1〜2年が求められるケースが多い)
- 難易度が高い職種:経理・財務(簿記資格+実務経験が必須レベル)、制作進行・PMO(業界知識+マネジメント経験を問われる)
採用側の視点から補足すると、「ゲームが好き」という熱量は確かにプラスに働きます。しかし、それだけで他候補者と差をつけるのは難しく、業務で即戦力となるスキルが採用の最終判断に直結します。
ゲーム業界の事務転職で求められるスキルと資格
採用担当として選考に携わってきた経験から言うと、ゲーム会社の事務採用で「なぜこの人を採用するのか」を説明できる根拠が必要です。スキルはその根拠の核となります。
ほぼすべての事務職で求められるベーススキル
職種を問わず、次のスキルは最低限求められると考えてください。
- 基本的なPC操作(Excel・メールなど)。ExcelはSUM関数・四則計算・表計算が最低ライン。より上位のポジションではVLOOKUP・IF関数・ピボットテーブルが求められる
- 社内外とのコミュニケーション(電話・メール・チャットツール)への抵抗がないこと
- スケジュール管理・タスク優先度付けの能力
事務未経験の方も歓迎・ゲーム業界での就業経験は不要としている求人も存在します。ただし、それはあくまでスクリーニングの入り口の話であり、書類・面接を通過するには上記スキルが実質的に必要です。
職種別に有利になる資格・経験
それぞれのポジションで差をつけるために有効な資格と経験を整理します。
- 経理・財務:日商簿記2級以上(3級は最低限の入り口として評価される)、freee・弥生・SAP等の会計ソフト経験
- 人事・採用:社会保険労務士(勉強中でも評価対象になる場合あり)、採用管理ツール(Hrmos・OFFERBOX等)の操作経験
- 広報・マーケティング補佐:Googleアナリティクス・SNS運用実績・プレスリリース作成経験
- 制作進行・PMO:Jira・Confluenceなどのプロジェクト管理ツール経験、PMP等のプロジェクトマネジメント資格
いずれのポジションも、ゲームに関する基礎知識(主要ゲームエンジン・プラットフォームの違い・ゲームのマネタイズ構造など)を理解していると、開発チームとの連携場面で即戦力感が増し、採用評価につながりやすくなります。
ゲーム業界の事務職の年収水準|業界平均と比較して考える
ゲーム会社の事務職の年収は、会社規模・ポジション・経験年数によって幅が大きく、一概に「高い・低い」とは言えません。ただし、いくつかのデータから傾向を読み取ることはできます。
求人票から見える年収の目安
月給20〜40万円(年収例:350万円・20代後半)という求人情報が確認できます。これは一般事務〜運営補佐系のポジションの水準です。経理・人事などの専門職では年収400〜550万円程度が中心帯とされる求人も複数見られます。
一方で、大手パブリッシャー(任天堂・ソニー・カプコン・バンダイナムコなど)は有価証券報告書で従業員の平均年収を開示しており、全従業員平均(クリエイター含む)では600〜800万円台の企業もあります。ただし、この数値には開発職が含まれるため、事務職単体の年収はそれより低い水準になる点を念頭に置いてください。
他業界の事務職との比較
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、情報サービス業全体の事務系職種の平均賃金は製造業・小売業の同職種と比べ、やや高い水準にあるとされています。ゲーム会社は情報サービス業に分類されるケースが多く、同じスキルで転職を検討するなら年収水準は悪くない選択肢といえます。
ただし注意すべき点もあります。中小ゲームディベロッパーでは、業績がタイトルの売上に大きく左右されるため、賞与の変動幅が大きい傾向があります。固定給の安定性を重視するなら、複数タイトルを抱える大手パブリッシャーや、ゲームエンジン・ミドルウェア系の安定収益モデルの企業を選ぶのが有効です。
ゲーム業界の事務転職で失敗しない求人の探し方
ゲーム会社の事務求人は、探し方を誤ると非公開求人を見逃したまま選考機会を失います。効果的なルートを複数組み合わせることが成功の条件です。
総合転職エージェントを活用する
doda・リクルートエージェントなどの大手総合エージェントは、ゲーム会社の事務求人も一定数保有しています。特に非公開求人は求人サイトに出回らないため、エージェント登録が必須です。担当者に「ゲーム業界の事務職に絞って探している」と明示することで、マッチング精度が上がります。
ゲーム特化型エージェントを併用する
非公開求人や有名タイトルに関わるポジションも多数あり、キャリアアップや年収アップを狙いたい中堅〜ハイレベル層にも最適とされるゲーム特化型エージェントも存在します。ただし前述のとおり、 バックオフィス系の取り扱いは少ないため、クリエイティブ職以外を希望する場合は他サービスも併用することをおすすめします。
企業の採用ページを直接チェックする
大手ゲーム会社の採用ページには、求人サイトに掲載しない自社採用枠が存在します。興味のある企業をリストアップし、採用ページのRSSや求人更新通知を設定しておくと、掲載のタイミングを逃しにくくなります。
LinkedInやWantedlyを活用する
ゲーム会社の人事・採用担当がLinkedInで候補者を探すケースも増えています。プロフィールを整備し、「ゲーム業界 事務」「バックオフィス」などのキーワードで自己アピールを入れておくと、スカウトが来る可能性があります。
転職活動で押さえるべき面接対策と志望動機の書き方
採用担当として面接を多数担当してきた経験から言うと、ゲーム業界の事務職の面接でもっとも評価が割れるのが志望動機です。「ゲームが好きだから」だけでは落選します。採用担当が聞きたいのは「なぜうちの会社の事務でないといけないのか」です。
志望動機の組み立て方
効果的な志望動機には3つの要素が必要です。
- これまでの事務経験で何を担い、どんな成果を出したか(具体的な数値や実績)
- なぜゲーム業界の事務でその経験を活かしたいのか(業界・会社への理解に基づく理由)
- この会社の事務として、自分がどんな貢献ができるか(採用側の視点に立った提案)
たとえば「前職でプロジェクト管理ツールを導入してチームの進捗共有を効率化した経験を、御社の開発チーム支援に活かしたい」という形で、汎用スキル+ゲーム業界特有のニーズへの接続を意識して組み立てると説得力が増します。
よく出る面接質問と回答のポイント
事務職の面接でよく問われる質問とその回答ポイントを整理します。
- 「ゲームはどれくらいプレイしますか」→ 遊ぶ種類・頻度に加え、業界動向として気になっているタイトルや会社の動きに触れると業界への関心度を示せる
- 「チームを支えた経験はありますか」→ 事務職はチームサポートが本質なので、具体的なエピソードと数値(業務削減時間・コスト削減額など)を準備する
- 「繁忙期にどう優先順位をつけますか」→ プロジェクトリリース前後は開発チーム全体が繁忙になるため、マルチタスク管理の実例を話せると印象が良い
未経験・異業種からゲーム業界の事務転職は可能か
クリエイティブな会社において事務部門は地味な存在に映るケースが多いですが、どんな会社も経理や総務の機能なしで成り立つことはありません。 この点を正しく理解することが、未経験からの転職戦略の出発点です。
未経験でも狙いやすいポジション
第二新卒歓迎・未経験ゼロスタートの先輩たちが活躍中・学歴不問という条件を掲げる求人も一定数存在します。このタイプは一般事務・データ入力・受付アシスタントなど、専門スキルよりも基礎的なPCスキルとコミュニケーション能力を重視するポジションに多い傾向です。
ただし「未経験歓迎」は競合率が高くなる傾向があります。同じ「未経験歓迎」の枠に応募する中で、Excelの実務レベルを具体的に説明できるか、業務改善の経験を一つでも語れるかが合否を分けることが多いです。
異業種からの転職で活かせる経験
ゲーム業界の人事担当として採用面接を担当してきた経験から言うと、他業界の事務経験者が有利になる場面は確かにあります。特に次のような経験は評価されやすいと感じています。
- IT企業・SaaS企業での事務経験(ゲーム会社もITツール活用度が高いため親和性が高い)
- エンタメ・出版・映像業界でのプロジェクト進行経験(ゲーム業界の開発サイクルとの相性が良い)
- スタートアップでのマルチタスク経験(中小ゲームディベロッパーでは一人が複数業務を担うケースが多い)
逆に言うと、ゲーム会社特有の文化(リモートワーク比率の高さ・フラットな組織文化・成果主義的な評価制度)に対してカルチャーフィットを示せないと、スキルがあっても選考で落とされることがあります。企業研究の段階で、その会社が採用している人物像をできるだけ解像度高く把握しておくことを強くおすすめします。
転職前に確認したいゲーム会社の職場環境と注意点
「ゲームが好き」という気持ちで入社した後、職場環境のギャップに悩むケースは少なくありません。転職前に確認すべき点を整理します。
残業・働き方の実態
ゲーム開発はリリース前後に業務が集中するため、開発職の残業時間は繁忙期に増加します。事務職も開発チームとの連携業務があるため、特定の時期に残業が増えることがあります。求人票の平均残業時間の記載を確認するとともに、口コミサイト(OpenWork・Glassdoor等)で第三者の主観的な情報も参考材料の一つとして確認しておくと判断材料が増えます。
会社規模による環境の違い
大手パブリッシャーと中小ディベロッパーでは、事務職の働き方が大きく異なります。
- 大手パブリッシャー(任天堂・バンダイナムコ・スクウェア・エニックスなど):業務範囲が明確で組織が整備されている。一方で採用競争は激しく、求められるスキル水準も高い
- 中小ディベロッパー・インディーズ系:一人が複数業務を担うケースが多く、幅広い経験を積みやすい。業績がタイトルの成否に左右されやすい点は事前確認が必要
転職後のキャリアパス
事務職がしっかりしていなければ会社の運営も困難をきたし、クリエイターと同様に会社を背負うプロフェッショナルとして経営を支えているという側面があります。専門スキルを磨きながら、総務マネージャー・経営企画・人事責任者といったポジションへのキャリアアップも現実的な選択肢です。ゲーム業界内での経験は他業界でも評価されるため、将来の転職市場での汎用性も高いといえます。
ゲーム業界の事務転職に向けた次のアクション
「ゲーム業界の事務転職に興味はあるが、何から始めればいいかわからない」という方には、まず転職エージェントへの登録を強くおすすめします。市場に出回っていない非公開求人の情報収集・応募書類のアドバイス・面接対策まで、無料でサポートを受けられます。
第二新卒・若手の方であれば、以下の記事も参考にしてください。自分に合ったエージェントを選ぶ際のポイントが整理されています。

まとめ|ゲーム業界の事務転職で成功するためのポイント
ゲーム業界の事務転職は、「好き」という気持ちを活かしながら専門スキルを掛け合わせることで、現実的なキャリアチェンジになります。競合率は決して低くありませんが、準備次第で十分に戦える選択肢です。
- ゲーム会社の事務職は「一般事務」から「経理・財務」「制作進行」まで幅広く、職種によって求められるスキルと難易度が大きく異なる
- 採用で評価されるのは「ゲームが好き」という熱量よりも、具体的な事務スキル・実績・業界理解の掛け合わせ
- 求人数が少ないバックオフィス系はゲーム特化型と総合型エージェントを併用し、企業採用ページの定期チェックも欠かさない
- 会社規模(大手パブリッシャーvs中小ディベロッパー)によって業務範囲・安定性・キャリアパスが大きく異なるため、企業研究を念入りに行う
- まず転職エージェントに登録して非公開求人を含む市場全体を把握し、自分のスキルと合う求人を絞り込むことが最初の一歩

