株式会社熊谷組(以下、熊谷組)は、1898年に創業した準大手ゼネコンの一社で、北陸発祥の総合建設会社として日本の建設業界で重要な役割を果たしています。青函トンネル、黒部トンネル、関門トンネルなどの大型土木工事や、新宿野村ビルディングをはじめとする超高層建築を手がけ、世界最高層ビル「台北101」の施工にも中心的に携わった実績を持ちます。
転職を検討する際に気になるのが年収水準ですが、熊谷組の平均年収は準大手ゼネコンの中でどの程度の水準にあるのでしょうか。本記事では、熊谷組の最新の平均年収データから役職別・年齢別の年収推移、他社との比較、福利厚生、転職難易度まで、転職検討者が知りたい情報を詳しく解説していきます。
熊谷組の会社概要
熊谷組は1898年(明治31年)に創業、1938年(昭和13年)に設立された歴史ある準大手ゼネコンです。東京都新宿区に本社を置き、登記上の本店は創業地である福井県福井市に置いています。資本金301億円、従業員数約2,700名の規模を誇り、東証プライム市場に上場している企業です。
熊谷組の基本情報
項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | 株式会社熊谷組 |
本社所在地 | 東京都新宿区津久戸町2番1号 |
設立年 | 1938年(昭和13年)1月6日 |
業種 | 建設業 |
事業内容 | 土木工事、建築工事、海外建設事業 |
上場市場 | 東証プライム市場 |
熊谷組の事業領域は多岐にわたり、主力である建設事業では国内土木事業、国内建築事業、海外建設事業を展開しています。特にトンネル工事における技術力は業界でも高く評価されており、青函トンネルや関電トンネルなど日本を代表するトンネル工事を手がけてきました。近年では建設周辺事業にも注力し、再生エネルギー事業、不動産開発事業、インフラ運営事業、技術商品販売事業などを通じて収益の多様化を図っています。また、住友林業との協業による木質バイオマス発電事業や中大規模木造建築分野での取り組みなど、環境に配慮した事業展開も積極的に進めています。
熊谷組の平均年収はどのぐらい?
年度別の平均年収推移
熊谷組の最新の平均年収は849万円(2025年3月期)で、平均年齢は44.0歳、平均勤続年数は18.7年となっています。過去10年間の推移を見ると、2014年度の613万円から着実に上昇傾向を続けており、特に2015年度から2016年度にかけて大幅な増加を示しています。
年度 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
---|---|---|---|
2025年3月期 | 849万円 | 44.0歳 | 18.7年 |
2024年3月期 | 848万円 | 44.1歳 | 18.9年 |
2023年3月期 | 845万円 | 44.2歳 | 19.0年 |
2022年3月期 | 840万円 | 44.3歳 | 19.4年 |
2021年3月期 | 802万円 | 44.5歳 | 19.5年 |
2020年3月期 | 804万円 | 44.8歳 | 19.8年 |
出典:株式会社熊谷組 有価証券報告書(2025年3月期)
他企業との比較データ
熊谷組の平均年収849万円を同業他社と比較すると、準大手ゼネコンの中では中位の水準に位置しています。スーパーゼネコン5社の平均年収が1,088万円であることを考慮すると、約240万円の差があります。
企業名 | 平均年収 | 分類 |
---|---|---|
鹿島建設 | 1,185万円 | スーパーゼネコン |
大林組 | 1,140万円 | スーパーゼネコン |
長谷工コーポレーション | 1,058万円 | 準大手ゼネコン |
前田建設工業 | 967万円 | 準大手ゼネコン |
熊谷組 | 849万円 | 準大手ゼネコン |
東洋建設 | 838万円 | 中堅ゼネコン |
出典:各社有価証券報告書(2024年度)
準大手ゼネコン10社の平均年収は951万円となっており、熊谷組はその中では下位に位置していますが、全国の平均年収443万円(国税庁調べ)と比較すると約400万円高い水準にあり、十分に高年収企業と言えるでしょう。
熊谷組の役職別年収データ
熊谷組の役職別年収については、公式データとしては非開示となっていますが、業界水準や口コミ情報を参考にした推定年収は以下の通りです。
役職 | 推定年収(万円) |
---|---|
係長・主任クラス | 700-800 |
課長クラス | 900-1,100 |
部長クラス | 1,200-1,400 |
出典:業界推定値および口コミ情報
熊谷組では年功序列の色合いが強く、昇進のタイミングは比較的予測しやすい傾向にあります。課長職に就くまでには一定の年数が必要ですが、大手ゼネコンと比較すると若手のうちから責任のある役職に就く機会が多いとの評価もあります。特に現場の施工管理職では、他社よりも早い段階で作業所長などの重要なポジションを任される可能性があります。
熊谷組の年齢別年収推移
熊谷組の年齢別年収推移については、公式データとしては非開示となっていますが、平均年収と業界動向から推定した年収範囲は以下の通りです。
年代 | 推定年収範囲(万円) |
---|---|
20代 | 400-600 |
30代 | 600-900 |
40代 | 800-1,200 |
50代以上 | 1,000-1,400 |
出典:業界推定値および口コミ情報
新卒入社の場合、初任給は学歴によって異なり、大学院卒で約25万円、大学卒で約23万円程度からスタートします。20代前半では基本給は控えめですが、残業代がしっかりと支給されるため、実際の手取り額はある程度確保できます。30代に入ると役職に就く機会が増え、年収も大幅にアップする傾向にあります。40代以降は管理職としての役割が期待され、年収1,000万円を超える水準に達する可能性が高くなります。
熊谷組の福利厚生
熊谷組は社員の豊かな人生を支援するため、充実した福利厚生制度を整備しています。特に住宅関連の支援制度は手厚く、独身者向けの寮制度や既婚者向けの借り上げ社宅制度が用意されています。
制度・手当 | 内容 |
---|---|
住宅手当 | 独身寮(月額17,000円程度)、借り上げ社宅制度 |
交通費 | 全額支給 |
退職金制度 | 勤続年数に応じて支給 |
有給取得 | 年間有給休暇制度 |
資格取得支援 | 一級建築士取得支援(会社負担での予備校通学) |
保養所 | 軽井沢研修所 |
出典:株式会社熊谷組 採用サイト
住宅支援については、独身者は水道光熱費込みで月額17,000円程度の格安寮を利用できます。既婚者には借り上げ社宅制度があり、会社が賃貸契約を行い、最大7万円程度の家賃補助を受けることができます。また、テレワーク制度、育児休業、育児短時間勤務、介護休暇などのワークライフバランス支援制度も充実しており、多様な働き方に対応しています。資格取得支援制度では、特に一級建築士の取得に対して手厚いサポートがあり、入社1年目は全員が予備校に通い(会社負担)、資格取得に向けた勉強環境が整備されています。その他、各種社会保険、財産形成貯蓄制度、持株会制度、GLTD制度(団体長期障害所得補償保険)なども完備されています。
熊谷組の転職難易度は?
熊谷組への転職難易度は中程度から高めと考えられます。準大手ゼネコンとして安定した事業基盤を持ち、働き方改革や福利厚生の充実に取り組んでいることから、転職市場でも人気の高い企業です。
求められる人材像
熊谷組が求める人材像は、同社の企業理念である「誠実さ」と「挑戦心」を体現できる人材です。120年以上の歴史の中で培われたDNAを大切にしながらも、変化の時代に対応できる柔軟性とポジティブな姿勢を持つ人材を求めています。技術職では、建設業界での実務経験があることが望ましく、特に施工管理や設計の経験者は重宝されます。また、一級建築施工管理技士や一級土木施工管理技士などの国家資格を保有していると、選考において有利になる可能性があります。
転職成功のポイント
熊谷組への転職を成功させるためには、まず建設業界での実務経験を積むことが重要です。未経験者の場合は、まず中堅ゼネコンや専門工事会社で経験を積んでから挑戦することを推奨します。経験者の場合は、これまでの現場経験や担当した工事の規模、取得している資格などを具体的にアピールできるよう準備することが大切です。また、熊谷組は土木工事に強みを持つ企業なので、トンネル工事やダム工事などの大型土木工事の経験があると高く評価される可能性があります。面接では、技術的な知識だけでなく、安全管理への意識や品質への取り組み姿勢なども重視されるため、これらの観点からも自身の経験を整理しておくことが重要です。
まとめ
熊谷組の平均年収849万円は、準大手ゼネコンの中では中位の水準ですが、全国平均と比較すると十分に高い水準にあります。年功序列の傾向が強い一方で、若手のうちから責任あるポジションを任される機会もあり、キャリア形成の観点では魅力的な環境と言えるでしょう。
福利厚生制度は充実しており、特に住宅支援制度は手厚く、生活面での安心感を得ることができます。資格取得支援制度も整備されており、スキルアップを目指す技術者にとっては良好な環境が用意されています。
転職を検討する際は、建設業界での実務経験や関連資格の取得が重要なポイントとなります。熊谷組の企業文化や求める人材像をしっかりと理解し、自身の経験やスキルがどのように活かせるかを明確にして臨むことが転職成功の鍵となるでしょう。建設業界でのキャリアアップを目指す方にとって、熊谷組は検討すべき有力な選択肢の一つと言えます。