就職活動をする際に自分の進路を定めるため、業界研究の必要に迫られることが多いのではないでしょうか?
この記事ではそんな大学生の方に向けて、数ある業界の中から不動産業界に的を絞り、業界の仕組みや市場規模、仕事内容、魅力、向いている人の特徴について解説していきます。
この記事を読み終える頃には、不動産業界の特徴を捉えて自分が就活対象にすべき業界なのか判断がつき、今後の就活へ活かせるようになるでしょう。
不動産業界とは
不動産業界とは土地や建物などの不動産に関わる業務全般を扱う業界を指します。主にマンションやビル、商業施設、リゾート施設を企画開発する業者(デベロッパー)や、建設に関わる総合建設業者(ゼネコン)があります。
また、注文住宅や建売住宅を手掛けるハウスメーカーや、物件の売買と賃貸を仲介する不動産仲介業者もかかせません。他にも一戸建てやマンションを販売する住宅販売会社、不動産の物件管理を行う管理会社などがあります。
不動産業界の仕組み
不動産業界に従事する企業は「開発」「流通」「管理」の3つに大別できます。開発は企画開発業者(デベロッパー)、流通(賃貸、販売)は不動産仲介や販売代理、管理は管理会社が担っているのです。
企画開発業者は対象の土地にどのような建物が適しているかを考え、土地の所有者と交渉を行い契約が成立したら(土地を仕入れたら)建物の設計を行います。
流通は不動産オーナーと不動産を求める顧客をマッチングすることを生業とし、「不動産仲介事業」と「不動産販売代理」の2種類に分けられます。
不動産仲介事業では一戸建てやマンション、アパート、土地などを顧客へ賃貸や、売買を仲介。また、不動産オーナーの情報をもとに土地を購入したい企画開発業者への情報提供もしているのです。
不動産販売代理では不動産オーナーからの依頼を受けて、顧客が不動産を購入するよう販売促進を行います。
管理は不動産オーナーが所有する物件の管理を行います。主に入居者の対応やビルの清掃、テナント募集、トラブル対応を生業としています。
不動産業界の市場規模や今後の課題
不動産業界の市場規模や今後の課題については下記の通りです。
- 不動産業界の市場規模とランキング
- 不動産業界の現状と今後の課題
詳しく解説していきます。
不動産業界の市場規模とランキング
国土交通省が発表している「令和6年版 国土交通白書」にて「不動産業は、全産業の売上高の2.9%、法人数の12.9%(令和4年度)を占める重要な産業の1つである」と述べられています。
不動産業界の市場規模(売上高)については、財務省が調査した「年次別 法人企業 統計調査(令和5年度)」によると、近年において以下のように推移。
年度 | 市場規模(売上高) |
---|---|
2019年度 | 45兆3,835億円 |
2020年度 | 44兆3,182億円 |
2021年度 | 48兆5,822億円 |
2022年度 | 46兆2,682億円 |
2023年度 | 56兆4,539億円(前年比で22%増加) |
以上のことからわかるように、コロナ禍の影響で一時的に売上高が減少したものの、現在は回復傾向にあります。2023年度は前年比で22%増加しているため堅調と言えるでしょう。
また、不動産業界における2022年〜2023年にかける企業別の売上高ランキングは「業界動向リサーチ」の調査によると下記の通りです。
順位 | 企業名 | 売上高 |
---|---|---|
1位 | 三井不動産 | 2兆2,691億円 |
2位 | 三菱地所 | 1兆3,778億円 |
3位 | 大東建託※ | 1兆1,030億円 |
4位 | 東急不動産HD | 1兆0,058億円 |
5位 | オープンハウスグループ | 9,526億円 |
6位 | 住友不動産 | 9,399億円 |
7位 | 野村不動産HD | 6,547億円 |
8位 | ヒューリック | 5,234億円 |
9位 | オリックス※ | 4,187億円 |
10位 | レオパレス21 | 4,064億円 |
※大東建託やオリックスは不動産事業の売上高です
売上高は各企業のビジネス規模を測る指標になるため、売上の高さに比例してビジネスの規模も大きくなります。
不動産業界の現状と今後の課題
不動産業界の現状は、少子高齢化や人口減少の影響により市場規模が縮小傾向にあると言えるでしょう。都市部においては不動産価格の高騰が続いている状況です。
コロナ禍によりテレワークが浸透したことにより人々の働き方に変化が起きた影響で、マンションや小規模オフィス、リノベーション需要が伸びている傾向にあります。
また、新築住宅の着工件数は減少傾向にあります。国土交通省が発表した「建築着工統計調査報告(令和5年計)」によると、2023年の新設住宅着工戸数は819,623戸で、前年比4.6%減となり3年ぶりに減少しています。
※画像引用元:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和5年計)」より
今後の課題については、少子高齢化や人口減少にともなう市場の縮小が懸念されています。また、地方においては若い世代の人口減少が問題視されているため、空き家問題にどう取り組むのかが課題になっています。
不動産業界の主要な仕事内容
不動産業界の主要な仕事内容については以下の通りです。
- 企画開発
- 営業
- 事務
- 物件管理
詳しく解説していきます。
企画開発
企画開発(デベロッパー)はマンションやオフィスビル、商業施設、都市開発、建売住宅などの企画や開発を手掛けます。取得した土地にどのような物件を建て、人を集めるかを考える仕事です。
また、不動産業界において不動産開発は花形として人気がある職種のため、希望する学生が多く競争倍率が高い傾向にあります。
営業
不動産業界の営業は多岐に渡り、マンションなどの販売営業や、売買仲介、賃貸仲介、不動産投資などが挙げられます。営業成績に応じて歩合給(インセンティブ)が付くケースが多く、頑張りに見合った報酬を得られるのが魅力です。
不動産仲介の営業は物件の賃貸や売買を生業としており、顧客の要望をもとに物件の紹介や案内、契約締結などを担います。他にも不動産開発の営業は、土地のオーナー(所有者)に対してマンションなどを建築して収益化を図る提案を行います。
また、法人営業以外は個人の顧客を対象にしているケースが多いため、土日祝日に出勤し不動産オーナーの休みに合わせて日・水休みの企業も多いのが特徴です。
事務
事務は営業支援、契約事務、入居管理の3つに大別できます。契約事務は契約に関する書類や重要な説明書の作成、顧客への説明などを行います。
営業支援は広告の作成や電話対応、店舗に来店した顧客の対応などが主な業務です。入居管理は管理会社のケースだと家賃の入金管理や入居者への配布物作成のように多様な事務作業を担当します。
物件管理
物件管理は担当するマンションやオフィスビルなどの維持や管理を実施。他にもトラブルの対処やテナント・入居者の誘致、修繕工事の立案から実行などをして、管理する不動産の価値を高める役割を担っています。
また、マンションやアパートを管理する会社の場合は並行して賃貸仲介を行うこともあり、希望すれば営業から管理へ異動できる可能性があります。
不動産業界の魅力
不動産業界の魅力については下記の通りです。
- 成果が給与に反映されやすく、高年収を稼ぎやすい
- 長期に渡りキャリア形成できる
- 女性が活躍しやすい
詳しく解説していきます。
成果が給与に反映されやすく、高年収を稼ぎやすい
不動産業界における営業職の場合、「固定給+インセンティブ(成果報酬)」の給与形態が一般的なため、自分の頑張り次第で収入を伸ばしやすいです。
不動産は「人にとって人生における一番大きな買い物」と言われるほど、莫大な金額が動きます。そのため、住宅販売では1棟で数十万円、仲介なら手数料の10%などのインセンティブによる給与への加算も珍しくありません。
営業の成績次第では20代でも年収1,000万円以上を稼げる可能性があります。
長期に渡りキャリア形成できる
不動産業界には様々な職種があり特徴が異なるため、長期に渡ってキャリア形成できるのが魅力です。例えば、不動産の仲介業務と管理業務では仕事の内容や求められるスキルが異なるため、キャリアを広げられます。
他にも、職種を売買営業から賃貸営業に変えたり仲介から企画開発に変えたりと横展開して、新しい知識や技術を身に着けて長期的にキャリアを積み上げられるのです。
女性が活躍しやすい
特に不動産営業は実力主義のため、性別に関係なく成果を上げることで活躍できます。顧客が女性の場合、同性の女性に対応してほしいというニーズもあります。
また、顧客が夫婦の場合は夫が妻の意見を重視するケースが非常に多く、同性の目線で提案できる女性の営業担当者が好まれることもあるのです。
不動産業界に向いている人の特徴
不動産業界に向いている人の特徴については以下の通りです。
- メンタルの強さや体力に自信がある人
- 成果主義を活かし、高年収を稼ぎたい人
- コミュニケーション力を磨きたい人
詳しく解説していきます。
メンタルの強さや体力に自信がある人
不動産業界では精神的な強さや、体力の多さが求められます。営業職の多くは毎月与えられる目標に向かって売上を伸ばすことで、業績に応じて給与やインセンティブ(成果報酬)が上がります。数字によって評価されるため、プレッシャーに弱いタイプは不向きと言えそうです。
また、業務として物件や土地を見に行くための外出が多く、契約後の対応で事務作業もあることから残業が発生しやすいです。そのため、体力に自信のある人の方が向いていると言えるでしょう。
成果主義を活かし、高年収を稼ぎたい人
成果主義を活かして高年収を稼ぎたいと考えている人に、不動産業界は向いています。売買仲介や投資、運用の営業なら販売実績に比例してインセンティブ(成果報酬)が高くなることが多いため、高い給与を稼ぐことが可能です。
なかには20代で年収1,000万円を稼ぐ人もいるので、成果を出せば若いうちから稼げます。ただし、インセンティブの割合は会社ごとに異なり、完全歩合制の場合は最悪、給与が発生しないリスクがあるため入社前に確認した方が良いでしょう。
コミュニケーション力を磨きたい人
コミュニケーション力を磨きたい人にも向いています。顧客や不動産オーナー、投資家など複数の人の間に立って、交渉や調整を行う業務が多いからです。そのため、多くの利害関係者と関わるなかでコミュニケーションスキルが磨かれます。
まとめ
不動産業界の仕組みや市場規模とランキング、今後の課題、仕事内容、魅力、向いている人について解説してきました。
多種多様な業界があるため、どの業界や職種が自分に向いているか迷うことが多いと思いますが、まずは各業界の概要を知ることが重要です。
その上で「各業界の特徴」と「自分の就活の軸」を照らし合わせ、よりマッチしそうな業界はどこなのかを絞っていけば、後悔のない就職に繋がることでしょう。