「事務職のボーナスって、他の人と比べてどうなんだろう」と思ったことはないでしょうか。毎年夏と冬に支給される賞与は、年収の中でも比重が大きい収入源です。それだけに、自分の賞与額が平均水準と比べて多いのか少ないのかは、多くの方が気になるポイントです。
公的なデータと転職市場の実態を組み合わせると、事務職の賞与には「勤務先の規模」と「業種」によって大きな差が生まれる構造が見えてきます。この記事では、最新の統計データをもとに事務職の賞与平均を解説しつつ、賞与額を引き上げるための実践的な行動指針をお伝えします。
まず確認したい|全産業の賞与平均はどの水準か
事務職に特化した賞与データを見る前に、まず全産業の平均値を把握しておくことが重要です。自分の賞与額を「事務職の中での位置」だけで判断すると、転職判断を誤るケースがあるからです。
厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年9月分結果速報等(令和7年夏季賞与の特別集計)」によると、規模5人以上の支給事業所における労働者一人平均賞与額は426,337円(前年比2.9%増)とされています。
同省の「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年2月分結果速報等(令和7年年末賞与の特別集計)」によると、2025年冬季ボーナスの平均支給額は42万4,889円でした。 夏と冬を合計すると、全産業平均では年間85万円前後が一つの目安となります。
ただし、この数値は製造業・金融業・情報通信業など、賞与水準の高い業種も含んだ「全体平均」です。事務職に多い「卸売・小売業」「医療・福祉」「サービス業」などの業種ではこの数値を下回るケースも多く、単純比較には注意が必要です。
事務職の賞与平均|企業規模と業種で大きく変わる構造
事務職の賞与を左右するもっとも大きな要因は、「企業規模」です。年間200件以上の転職相談を受けてきた立場からも、「同じ一般事務でも大企業と中小企業では年間50〜100万円以上の賞与差がある」というケースは珍しくありません。
企業規模別の賞与水準
民間調査でも規模別の賞与差は鮮明に出ています。 企業規模別にボーナスの平均支給額を調査したところ、小企業(10〜99人)は71.1万円、中企業(100〜999人)は115.3万円、大企業(1,000人以上)は163.6万円となり、企業規模が大きくなるにつれてボーナス支給額も多くなることが確認されています。
事務職は中小企業への配置が多いポジションです。同じスキルセットを持っていても、大企業への転職によって賞与額が年間40〜90万円単位で改善するケースがあるというのは、数値が明確に示している事実です。
業種別の賞与格差
業種による格差も無視できません。 厚生労働省の「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年2月分結果速報等(令和7年年末賞与の特別集計)」によると、冬季ボーナスの平均支給額が最も高いのは電気・ガス業の94万1,438円で、続いて情報通信業、金融業・保険業など、金額が50万円を超える業種が多く見られます。
一方、事務職の採用が多い医療・福祉、小売、サービス業は全産業平均を下回る傾向があります。同じ「事務」という職種名でも、「どの業界の会社に所属しているか」が賞与の絶対額を大きく規定します。事務職の賞与改善を考えるなら、「職種を変える」よりも「業界・企業規模を変える」アプローチが効果的です。
年代別に見る賞与の変化|20代・30代・40代の実態
「自分の年齢層では賞与はいくらが標準なのか」は、転職を検討する際に欠かせない基準です。全職種の年代別データではありますが、事務職の自己評価にも十分活用できます。
年代別の年間平均支給額(民間調査)を見ると、20代が86.8万円、30代は107.1万円、40代は124.9万円、50代は143.2万円となり、全年代で前回調査から増加しています。
ただし、これも全職種・全業種の平均値です。事務職に限定すると、賞与水準は一般的にこれより低めになります。特に20代・30代の事務職で中小企業勤務の場合、年間賞与が40〜60万円台にとどまるケースも珍しくありません。
冬のボーナスについても同様です。 年代別の冬のボーナス(民間調査)では、20代が38.9万円、30代は50.3万円、40代は58.6万円、50代は68.0万円という水準です。 30代以降は経験・スキルの積み上げと査定への反映がボーナス額を押し上げる主な要因となります。
賞与の計算方法|「月数」と「基本給」で決まる仕組み
賞与の水準を正確に把握するには、計算の仕組みも理解しておく必要があります。仕組みを知ることで、転職先の求人票に書かれた「賞与あり(年2回)」の記載からおよその金額を試算できるようになります。
国内では「基本給×月数」という形で毎月の基本給をベースに賞与の支給額を算出するケースが一般的で、賞与1回につき基本給のおよそ1〜2ヶ月分の金額が支給されることが多いとされています。
たとえば、基本給が20万円で賞与が「年2回・各1.5ヶ月分」の会社であれば、年間賞与は60万円(税引き前)となります。基本給が低く設定されている企業では、月数が多くても絶対額が低くなるという点に注意が必要です。求人票を見る際は「月数」だけでなく「基本給の水準」と合わせて確認することが重要です。
賞与の3つの種類と事務職への影響
賞与制度は大きく3種類に分かれます。事務職の転職活動では、志望先がどの制度を採用しているかを確認しておくことで、将来の収入見通しが立てやすくなります。
- 基本給連動型賞与:基本給×月数で算出。毎月の給与が高ければ賞与も高くなる最もオーソドックスな仕組みです。
- 業績連動型賞与:企業の業績や個人の成果で支給額が決まります。事務職でも営業支援・経理・法務などの役割が明確なポジションでは、個人評価が反映されやすい傾向があります。
- 決算賞与:期末の業績が好調な場合に臨時で支給されるものです。毎年確実に受け取れる保証はないため、収入計画には含めすぎないほうが安全です。
基本給連動型賞与は支給額が一律で、全従業員が平等に受け取れる点が特徴であり、従業員が収入額の予測を立てやすいメリットがあります。一方で、業績や個人の成果が反映されにくいため、モチベーションアップにつながりにくい場合もあります。
賞与なし・少額の職場が多い事務職の現実
「事務職で転職したらボーナスが激減した」という声は、年間の相談の中でも一定数寄せられます。これは事務職求人の中に、賞与が少ないまたはない企業が含まれている実態を反映しています。
厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によると、賞与制度がある企業の割合は87.9%とされており、制度があっても実際に支給されなかったケースも一定数存在します。少数派ながら賞与が支給されない会社も現実に存在します。
事務職の求人は中小・零細企業からの募集も多く、これらの企業では賞与制度がない、あるいは「業績次第」で支給されないケースも含まれます。求人票に「賞与あり」と記載されていても、実態は寸志程度(数万円)にとどまるケースがあるため、面接や内定承諾前に賞与の実績額と支給月数を具体的に確認することが不可欠です。
「賞与あり」の記載だけでは不十分で、過去の支給実績額と支給月数を面接時に必ず確認することが、入社後のギャップ防止につながります。
事務職の賞与を上げるための現実的な3つのアプローチ
事務職として賞与を増やすルートは複数あります。「スキルを磨けばいい」という漠然としたアドバイスではなく、具体的な条件と行動セットで考えることが重要です。
アプローチ1|企業規模・業種の上位層へ転職する
最も効果が大きいのは、より賞与水準の高い企業・業種への転職です。同じ「一般事務」「営業事務」「経理事務」の仕事内容でも、企業規模が小企業から大企業になると年間賞与額は71.1万円から163.6万円へ、2倍以上の差が生まれます。
特に情報通信業・金融業・製造業(大手)の事務ポジションは、事務職の中でも相対的に賞与水準が高い傾向があります。転職活動を始める際は、職種名だけでなく「業種と規模の組み合わせ」で求人を絞り込むことを勧めています。
アプローチ2|専門性を高めて「スペシャリスト事務職」を目指す
「一般事務」のまま賞与改善を目指すのは難しいのが現実です。同じ事務系でも、経理・財務、法務、社労士補助、人事労務、貿易実務といった「専門領域」に軸足を移すことで、同じ企業内でも査定評価が上がりやすくなります。
簿記2級、TOEIC 700点台以上、社会保険労務士補助などの資格取得は、業績連動型の賞与制度を持つ企業への転職でも武器になります。専門資格を持つ事務職は、転職市場での希少性が上がるため、交渉力も高まります。
アプローチ3|転職のタイミングと賞与支給スケジュールを合わせる
賞与を確実に受け取ってから退職・転職するためには、支給スケジュールの把握が欠かせません。 ボーナスの支給がある企業では、夏のボーナスは6月下旬〜7月上旬、冬のボーナスは12月上旬〜下旬に支給されることが多いです。
また、企業によっては「支給月に在籍していること」を支給条件にしている場合があります。退職日の設定は支給日よりも後に調整することが基本です。転職活動を始めるなら、支給日から逆算して「活動開始時期」と「退職交渉時期」のスケジュールを組むことをお勧めします。
編集部の見立て|事務職の賞与改善で見落とされがちな視点
転職相談の中で繰り返し気づくことがあります。それは、「事務職の賞与が低い理由」として「職種そのものが原因」と思い込んでいる方が多いという点です。
しかし実際には、事務職でも大企業(1,000人以上)に勤める場合の年間ボーナス平均は163.6万円に達します。問題は「事務職という職種」ではなく、「どの規模・業種の会社に所属しているか」です。この視点を持つだけで、転職活動の方向性はまったく変わります。
また、「賞与が少ない会社は月収が高い」と思われがちですが、賞与がない企業の中には、賞与を支払わない代わりに月々の給与を増額している企業もあります。そのため、賞与額だけでなく「月給+賞与」の年収総額で比較する視点が不可欠です。
賞与額の比較は「月収との合計年収」でおこない、業界・企業規模の軸を組み合わせて判断することが、転職成功率を高める鍵です。
転職エージェントを活用して賞与水準の高い求人を探す
事務職で賞与改善を目指すなら、賞与実績額や福利厚生の詳細情報を持つ転職エージェントの活用が有効です。求人票に表れない「賞与の実態」を把握するには、エージェントが持つ非公開情報や内部情報が力になります。
自分のスキルセットと希望する賞与水準が合致する企業・業種を絞り込む作業は、一人でおこなうよりもエージェントとの面談を通じたほうが圧倒的に効率的です。まず1〜2社のエージェントに登録し、初回面談で「賞与実績の高い事務系求人を紹介してほしい」と具体的に伝えることから始めてみてください。

まとめ|事務職の賞与平均と転職で改善するための要点
事務職の賞与を正確に把握し、改善に向けた行動を取るには、全産業平均との比較・企業規模・業種・賞与の仕組みを組み合わせた多角的な視点が必要です。データが示す構造を理解したうえで、次の行動に移すことが収入改善への最短経路です。
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、2025年夏季賞与の全産業平均は約42万6,337円(規模5人以上・支給事業所平均)、2025年冬季は約42万4,889円で、全体では年間85万円前後が一つの目安となる
- 事務職の賞与額を最も大きく左右するのは「企業規模」と「業種」であり、小企業と大企業では年間賞与に約2倍以上の差が生まれる構造がある
- 「賞与あり」の記載だけでは不十分で、面接前・内定承諾前に過去の支給実績と支給月数を具体的に確認することで入社後のギャップを防げる
- 賞与の比較は「月給との合計年収」でおこなうこと。賞与なし・月給高めの企業も存在するため、年収総額での判断が重要
- 賞与改善を目指す転職では、業界・企業規模の軸を変える戦略と、転職エージェントを活用した賞与実態の情報収集が有効
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