英語が使える環境で働きたい、でも自分のスキルで本当に転職できるのか不安——そう感じている方は多いのではないでしょうか。人事担当として複数の企業で採用選考に携わってきた経験からいうと、「英語ができる事務職人材」への需要は思っている以上に高く、かつ採用側が求めるハードルもケースによってかなりバラつきがあります。スコアや経歴だけで「自分には無理」と諦めてしまうのは、実はとてももったいない状況なのです。
この記事では、事務職で英語を活かして転職を成功させるために必要な情報を、求められるTOEICスコアの目安・英語事務の職種ごとの特徴・転職を有利に進める具体的な準備ステップの順に整理してお伝えします。
英語を活かせる事務職の種類|まず全体像を把握しよう
「英語を使う事務職」といっても、求められる英語力や日常業務の内容は職種によって大きく異なります。採用の現場で多くの候補者と面談してきた立場から正直に言うと、「英語事務に転職したい」という方が実際にどの職種を目指せばよいかを把握していないケースが非常に多いと感じています。まずは主な4つの職種の違いを確認しましょう。
英文事務
英語を用いた事務全般を指します。 海外の会社との電話・メール対応、英文の資料作成、翻訳・通訳業務など、業務内容は非常に多岐にわたります。 一般事務の延長線上にある職種のため、既存の事務スキルをそのまま活かしやすいのが特徴です。
英文事務の平均年収は385.4万円とされており(doda「英文事務アシスタント/翻訳/通訳の仕事データ」参照)、キャリアアップ次第で500万円以上も視野に入ります。 最初の一歩として挑戦しやすい職種といえます。
貿易事務
輸出入に関する通関書類の作成・管理、海外業者との折衝などを担う職種です。英語力だけでなく、貿易実務の専門知識も求められるため、未経験から挑戦する場合は研修制度が整った企業を選ぶことが重要です。 資料作成やデータ入力・集計のスキルなど、一般的な事務スキルも活かすことができます。
英文経理
英文経理は、英語でおこなう経理の仕事で、外資系企業での求人が多いですが、近年は海外拠点を持つ日系企業での求人も増えています。 英語力に加えて簿記の知識が必要なため、英語事務の中ではやや専門性が高い分類になります。年収レンジも高く、年収450万円から699万円程度の求人も見られます。
翻訳事務
翻訳事務は、社内外の文書(契約書・マニュアル・プレゼン資料・メールなど)の英訳・和訳を中心に、用語統一・スタイルチェック・校正(レビュー)までを担当する事務職です。 一定以上の正確性が求められるため、英語力の必要水準は英文事務より高くなります。ただし最近はAIの発達により翻訳業務のサポートを受けながら取り組むことができるため、ひと昔前よりは転職のチャンスが広がっているとも言えます。
事務職の転職で求められるTOEICスコアの目安
「何点あれば転職できるか」は、転職希望者から最も多く聞かれる質問のひとつです。採用担当者として正直にお伝えすると、スコアはあくまで足切りのための目安であり、「何点あれば絶対に通る」という基準は存在しません。それでも、現在の転職市場の傾向として知っておくべき数字はあります。
転職市場全体のTOEIC基準点
IIBCが実施した「英語活用実態調査2019(企業・団体・ビジネスパーソン)」によると、企業が採用時に参考とするTOEIC L&Rスコアの平均は620点でした。 またJAC Recruitmentがお預かりしている求人データでは、TOEICスコア700点以上を応募要件とする求人が最も多く見られます。このことから、700点以上が転職市場における一つの基準点になっていることが分かります。
英語事務への転職を狙うのであれば、この700点という数字を意識しておくのが現実的です。ただし英文事務であれば要件はやや低くなるケースが多く、目安としてTOEIC600点以上もしくは英検2級以上の英語力があると、英語での読み書きが抵抗なくできると判断されることが多いです。
スコア別の狙える求人ライン
スコアと求人のマッチ感を整理すると、以下のような目安で考えると動きやすくなります。
- TOEIC 600点前後:英文事務・貿易事務(未経験歓迎ポジション)への応募が可能。第二新卒・若手向けの求人に多い
- TOEIC 700点前後:転職市場全体での基準点。外資系・グローバル日系企業の英文事務・営業事務に応募しやすくなる
- TOEIC 750点以上:30代以上の転職では特に有利。英文経理・翻訳事務の正社員ポジションでも評価されやすい
リクナビネクストのデータでは、英語が活かせる求人のうちTOEICが条件となっているのは約40%の1,776件で、求められるスコアは500点から900点以上まで様々ですが、平均すると650点ほどとのことです。 全体としては幅があることを覚えておきましょう。
TOEICスコアと年収の関係性
スコアが高いほど年収も高い傾向があることは、複数の調査データで示されています。 日経転職版の集計によると、スコア別に平均年収をみると「900点以上」の平均年収は965万円で、「600点台」と「700点台」では55万円差に広がります。
もっとも、この年収差には職種・役職・業種も大きく影響しています。スコアを追うことだけが目的にならないよう、どの職種で英語を活かしたいかを先に明確にしておくことが重要です。
英語事務への転職に必要なスキル|英語力だけでは通らない
「英語さえできれば採用される」と思い込んで応募してくる方を、採用側として何人も見てきました。率直に言うと、英語力は必要条件であっても十分条件ではありません。英語事務の採用で同時に見られているスキルを把握しておきましょう。
基本的な事務スキル(PCスキル)
一般事務に英語力が必要なのが英文事務です。事務職のひとつなので、基本的な事務スキルは必須で、電話対応・メール対応はもちろんのこと、資料作成やデータ入力にはWordやExcelを使います。
英語のスコアが高くてもExcelの基本操作に不慣れなままでは、選考で大きなマイナス評価になります。MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)の取得や、実務レベルでのPCスキルをアピールできるよう準備しておくと安心です。
異文化コミュニケーション力
特に海外とのコミュニケーションにおいては、英語力だけではなく、商習慣の違いや時差、生活文化の違いも考慮する必要があります。相手の営業時間や休暇のタイミング、適切な指示の細かさなどに気を配り、業務を円滑に進める総合的なコミュニケーション力が求められます。
採用面接で「英語を使った業務でどんな困難がありましたか」と聞いたとき、スコアが高くてもこうした異文化への感度が低い候補者は、外資系や国際部門では敬遠されることがあります。具体的なエピソードを事前に整理しておくと面接での印象が変わります。
スケジュール管理・コミュニケーション力
案件ごとにスケジュール管理や進捗管理が必要な業務においては、資料作成だけでなく、適切なタイミングでのリマインドや納期調整など、アシスタントとしての対応力も求められます。
英文事務は「縁の下の力持ち」的な役割が多い職種です。事務処理の正確さと、周囲を巻き込む調整力の両方をアピールできると、採用担当者の目に留まりやすくなります。
英語事務への転職で有利になる業界|狙い目の市場を知る
「英語事務の求人はどの業界に多いのか」という視点で転職活動を進めると、より効率的に動けます。編集部として求人データのパターンを分析したところ、英語事務の求人が集中しやすい業界として、以下の4つが特に目立ちます。
- 外資系メーカー・製薬会社:社内の公用語が英語であるケースも多く、英語を日常的に使う環境が整っている
- 商社・貿易会社:海外サプライヤーや輸出先との書類・メール対応が頻繁に発生し、英文事務・貿易事務の需要が高い
- IT・テクノロジー企業:英語マニュアルの読解や海外拠点とのやり取りなど、 英語とITは親和性が高く、英語を活かせる環境が多いとされている
- 物流・海運会社:通関書類や海外代理店との英語コレポン(英文通信)が日常業務に含まれる
また英文事務と言っても幅が広いため、全体の求人数は非常に多く、今後は外資企業や大手企業も含めて多くの企業がグローバル化していくと考えられるため、さらに求人数は増えるでしょう。 英語スキルを磨く時間は、無駄になりません。
転職活動を成功させるための準備ステップ|3つの段階で進める
英語事務への転職を検討しているなら、「何となく英語を磨きつつ求人を眺める」という状態では時間を無駄にしてしまいます。採用選考に関わってきた経験から言うと、準備を段階的に進めた人ほど内定獲得のスピードが早い印象があります。
ステップ1|自分のTOEICスコアを確認・可視化する
まず現在の自分の英語力を数値で把握することが出発点です。 英語力に自信がある・ないにかかわらず、今の自分の実力を可視化・数値化することで、どこに応募できるか、何を努力すればよいか明確になります。
スコアが現在600点未満の場合は、英文事務の未経験歓迎枠を狙いつつ並行してスコアアップに取り組む計画を立てましょう。すでに600〜700点台にある場合は、すぐに応募活動を始めながらスコア改善を進める方が効率的です。
ステップ2|事務スキルと英語スキルを同時にアピールできる職務経歴書を作る
英語事務の採用で「惜しい」と感じる職務経歴書に共通しているのは、英語力の説明に紙面を使いすぎて、事務スキルの具体的な記述が薄い点です。採用担当者は「英語が使えることは分かった。では事務として何ができるのか」を確認したいと考えています。
職務経歴書では、英文メールの対応件数・使用したツール・扱った書類の種類など、英語を使った業務の具体的な内容を数字や事実で記述するのが効果的です。英語実務経験がない場合は、海外での留学経験があればアピールのひとつになります。実際に現地の英語・コミュニケーションに触れているという実績として企業から評価されることがあります。
ステップ3|転職エージェントを活用して非公開求人にアクセスする
英語事務・外資系事務・貿易事務の求人は、一般公開されていない非公開求人として流通するケースが少なくありません。 転職エージェントを利用していればキャリアアドバイザーにTOEICスコアをどう活用するか相談するとアドバイスがもらえます。 自分の英語力・事務スキルに応じた求人を紹介してもらえるため、闇雲に応募するより効率が格段に上がります。
「英語を活かしたい」という方向性だけ決まっていれば、まずエージェントに現状を話すことが次の一手として最も効率的です。自分の市場価値を客観的に知るだけでも、転職活動の見通しが大きく変わります。
英語事務への転職でよくある誤解|採用側から見た本音
採用担当として多くの転職希望者と接してきた中で、「思い込みがもったいない」と感じる誤解がいくつかあります。ここではよく見かける3つのパターンを正直にお伝えします。
誤解1|英語が話せないと英語事務には応募できない
実際の英語事務の業務は、メール対応や資料作成など読み書きが中心のポジションが多く、スピーキングを問わない求人は意外に多いです。特に英文メール・書類作成メインのポジションであれば、会話力よりもライティング力の方が重視されます。「話せないから無理」という先入観で自分の選択肢を狭めないでください。
誤解2|英語事務は競争が激しくて未経験では無理
英文事務は「英語力と事務スキルの両方が必要」というイメージがありますが、事務経験がなくても語学スキルがあれば比較的キャリアチェンジしやすい職種です。 特に20代の若手であれば、ポテンシャルを重視した採用をしている企業も多く、「英語は伸ばせる環境」として採用を決める企業も珍しくありません。
誤解3|TOEIC600点では低すぎてどこにも応募できない
第二新卒(大学や院を卒業後3年以内の人)向けの募集をチェックすると、600点前後のTOEICスコアを求める求人が多くあります。 600点台でも十分に応募できる求人は存在しており、「700点になってから動く」と決め込んでいると、タイミングを逃してしまうことがあります。スコアアップと並行して求人情報を収集し始めることをおすすめします。
英語を活かすキャリアパス|英文事務はゴールではなくスタート
英文事務に転職することを最終目標にしている方がいますが、採用担当目線では少し視点を広げることをおすすめします。英文事務は、より専門性の高い英語キャリアへの「入口」として非常に有効な職種です。
英文事務によって何らかの領域で専門性を身につけると、貿易事務や英文経理、通訳・翻訳などの、より専門性の高い英語を活かした職種に転換することも可能です。 たとえば製薬会社の英文事務として医薬品関連の英語知識を積み上げながら、数年後に薬事部門の英文担当として転職する——というキャリアパスは決して珍しくありません。
また英語力は専門スキルの一つとして評価され、収入アップに直結するケースが少なくありません。多くの企業では、一定以上のTOEICスコアを持つ社員に対して資格手当を支給しています。 現在の職場で英語力を伸ばしながら資格手当を獲得し、転職のタイミングでスコアをアピールするという戦略も現実的な選択肢のひとつです。
英語事務への転職を相談するなら|次の一歩
英語を活かせる事務職への転職は、TOEICスコアだけでなく、どの職種を目指すか・どの業界に絞るかという戦略の組み立てが結果を左右します。一人で悩むよりも、グローバル求人に強い転職エージェントに相談することで、市場における自分の立ち位置と具体的な求人の両方を一度に把握できます。

まとめ|英語事務への転職で押さえておくべきポイント
英語を活かした事務職への転職は、スコアと職種の組み合わせを正しく理解すれば、思っている以上に現実的な選択肢です。まず自分の英語力と事務スキルの現在地を把握し、職種・業界を絞り込んで動き出すことが最初のアクションになります。
- 英語事務には英文事務・貿易事務・英文経理・翻訳事務があり、職種ごとに求められる英語力と年収レンジが異なる
- 転職市場での基準点はTOEIC700点以上が多いが、英文事務未経験歓迎ポジションはTOEIC600点前後から応募できる求人もある
- 英語力だけでなく、PCスキル・スケジュール管理・異文化コミュニケーション力が採用で同時に評価される
- 英文事務はキャリアのゴールではなく、貿易事務・英文経理・翻訳職へのステップアップの起点になる
- 転職エージェントを活用することで、非公開求人へのアクセスと自分の市場価値の把握を同時に進められる

