MENU

事務職のリスキリングで市場価値を上げる方法|今すぐ始められるスキルと手順

Photo by Margaret Stokman on Unsplash
  • URLをコピーしました!

「事務職って、このままで大丈夫なのだろうか」——そう感じている方は少なくないはずです。AIや自動化ツールの普及が加速するなか、定型業務を中心に担ってきた事務職は、業務内容の変化を最も直接的に受けている職種のひとつだからです。

ただ、不安に感じる必要はありません。むしろ今こそ「リスキリング(学び直し)」を活用して、自分の市場価値を一段上げるチャンスです。この記事では、事務職の方がリスキリングに取り組むべき理由から、今すぐ始められる具体的なスキル、国の補助制度の活用方法まで、人事担当として3社の採用現場を見てきた筆者の視点から整理してお伝えします。

目次

事務職にとってリスキリングが必要な理由

「リスキリングって、エンジニアや営業職の話でしょ?」と思っていませんか。実はそれが大きな誤解です。

AIに取って代わられるとされる仕事のひとつに事務職が挙げられており、なかでも定型的な業務(同じことを繰り返すような業務)は、そう遠くない将来、AIに代替される可能性があるとされています。

IT業界・製造業・商社と3社の人事担当として採用に関わってきた筆者の実感でも、この傾向は年々強まっています。書類処理・データ入力・スケジュール管理といった定型業務は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や生成AIに代替されつつあります。一方で、そのツールを使いこなし、業務を設計・改善できる人材への需要は逆に高まっています。

つまり、事務職にとってのリスキリングとは「他の職種に転身する」ことだけではありません。「今の事務職としての土台を活かしながら、一段上のスキルを身につけて市場価値を高める」というアプローチが現実的かつ有効です。

リスキリングとアップスキリング、どちらが自分に向いている?

よく混同される言葉として「アップスキリング」があります。整理しておきましょう。

リスキリングは「全く新しいスキルを習得すること」を指し、アップスキリングは「既存スキルをさらに深めること」を意味します。 たとえば、事務職がWebマーケティングを学ぶのがリスキリング、Excelのマクロや関数をより深く学ぶのがアップスキリングにあたります。

どちらが「正解」というわけではなく、現在の職場での評価を高めたいならアップスキリング、キャリアの幅を広げたい・転職も視野に入れているならリスキリングが向いています。この記事では主にリスキリングを中心に解説しますが、両方の視点を取り入れて考えることをおすすめします。

事務職が優先して取り組みたいリスキリングのスキル領域

「何を学べばいいかわからない」という声は、採用相談の場でも頻繁に聞きます。闇雲に学び始める前に、まず「市場で求められているスキル」を把握することが重要です。以下に、事務職の方に特に有効な5つの領域を挙げます。

①データ分析・Excel・BIツール

事務職がすでに日常的に扱うExcelを「使える」から「分析できる」レベルへ引き上げることは、最もコストパフォーマンスの高いリスキリングです。

PythonやSQLなどのプログラミングスキル、ExcelやBIツールを使ったデータ分析能力は、幅広い業界で重宝されます。これらのスキルを習得すれば、業務効率化や戦略立案に直結する能力として評価され、転職市場での価値が向上します。

まずはExcelのピボットテーブル・VLOOKUP・IF関数の応用から始め、慣れてきたらPower BIやTableauなどのBIツールに手を伸ばすのが自然なステップです。データを「読んで報告できる」人材は、どの職場でも重宝されます。

②業務自動化(RPA・マクロ・生成AI活用)

定型業務がAIに代替されるなら、そのAIやRPAを操作・管理できる側に回ることが最善の戦略です。

ExcelのVBAマクロ、Microsoft Power Automate、あるいはChatGPTなどの生成AIを業務に組み込む力は、現場の事務担当者として直接手を動かしてきた人間ほど習得スピードが速い傾向があります。「どの業務を自動化できるか」を肌感覚で知っているからです。採用担当者として面接を重ねてきた筆者の見立てでは、この「現場経験×自動化スキル」の組み合わせは、採用側に非常に刺さります。

③Webマーケティング・SNS運用

事務系からのキャリアチェンジ先として、Webマーケティング職やSNS運用担当は人気の高い選択肢です。正確な情報処理能力やスケジュール管理のスキルは、マーケティング業務との相性が良く、事務職経験を強みとして転職アピールに使いやすい点が特徴です。

Google アナリティクスの基礎操作やSEOの基本知識、SNS広告の仕組みなどを学ぶコースは、オンラインスクールや動画教材でも豊富に用意されています。

④経理・財務の専門知識(簿記・会計ソフト)

一般事務から経理事務、さらには経理専門職へのキャリアアップを目指す場合、日商簿記2級の取得は依然として有効な選択肢です。業種・企業規模を問わず求人数が多く、スキルの汎用性が高い点が魅力です。

freee・弥生会計・SAP(ERPシステム)など会計ソフトの操作経験は、求人票に「歓迎スキル」として記載されることが増えています。在職中から実務で使えるツールを積極的に試してみることをおすすめします。

⑤語学(ビジネス英語・英文事務対応)

外資系企業や海外取引のある企業では、英語での書類作成・メール対応ができる事務職の需要が高く、語学力は希少性の高い武器になります。

TOEIC 700点以上を目安に、ビジネス英語メールや電話対応の実践練習を積み重ねることで、求人の選択肢が大幅に広がります。語学は他のITスキルと組み合わせることで、さらに差別化効果が高まります。

国の補助制度を活用してコストを抑えて学ぶ

「スクールに通う費用が心配」という方に知ってほしいのが、国の補助制度です。費用を理由に学び直しをためらっているなら、ぜひ確認してください。

経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」

経済産業省による「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、在職中であれば年齢・雇用形態を問わず利用でき、キャリアコンサルタントへの相談から転職支援まで一貫したサポートを受けられます。講座受講料の補助は受講修了時点で50%(上限40万円)、転職完了後1年継続就業の達成も含む条件のもとで最大70%(最大56万円)となります。

本事業は令和5年度にスタートし、事業自体は令和8年度末(2027年3月末)まで継続される予定です。2026年6月現在、採択済みの補助事業者を通じて引き続きサービスを受けることができます。なお、利用できる事業者や講座は変動する場合があるため、公式ポータルサイトで最新情報を確認することをおすすめします。

給付金を受ける条件として「雇用主の変更を伴う転職を目指していること」「サービスへの登録時とキャリア相談の初回面談時に、雇用主と雇用契約を締結していること」を満たす必要があります。 つまり、在職中に登録を済ませておく必要があります。転職を少しでも視野に入れているなら、早めに動くのが得策です。

厚生労働省「人材開発支援助成金」

厚生労働省の人材開発支援助成金は、企業が従業員に対して行う職業訓練の経費と訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。2026年現在、「事業展開等リスキリング支援コース」は申請件数が伸びているコースのひとつです。なお、同コースは令和8年度末(2027年3月末)までの期間限定制度であるため、最新情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

個人ではなく企業が申請する制度ですが、在職中の方は「会社として利用できないか」を人事・総務部門に相談してみる価値があります。社内制度として活用できれば、自己負担を大きく抑えてスキルアップが実現するケースもあります。

事務職のリスキリングを転職に活かすための考え方

スキルを身につけることと、転職で評価されることは別の話です。採用担当者として何百枚もの履歴書を見てきた経験から、「学んだだけ」と「活かせる人材」の差がどこにあるかを正直にお伝えします。

「何のために学ぶか」を先に決める

リスキリングでよくある失敗パターンは「とりあえずプログラミングを学んでみたが、業務に活かせなかった」というケースです。

ジョブ型雇用の広がりとともに、企業が即戦力を重視する傾向は強まっています。業務に直結するスキルを学んでいる候補者を企業側も高く評価するため、実務スキルの習得を目指すリスキリングに加え、技能証明となる資格を取得すると即戦力アピールとして効果的です。

「現職の業務効率化に使いたい」「3年以内にWebディレクターに転職したい」「経理専門職として年収を上げたい」——目標を具体的に設定してから、それに必要なスキルを逆算して選ぶことが、最短距離につながります。

学んだスキルを「実績」に変えて見せる

習得したスキルを履歴書やポートフォリオに具体的に示すことで、自身の専門性を可視化できます。採用担当者は、過去の経験だけでなく、現在の能力や学習意欲を評価するため、リスキリングを積極的にアピールすることで、転職市場での優位性が高まります。

たとえば「Excelマクロで月次集計の作業時間を50%削減した」「Power BIで部門別コストの可視化ダッシュボードを作成した」など、数値や成果物で語れるエピソードに落とし込むことが採用側の評価に直結します。資格の取得だけでなく、実務での活用実績をセットで示すことを意識してください。

「転職せずにキャリアアップ」も立派な選択肢

リスキリングというと転職ありきのイメージがありますが、現職での評価向上・社内異動・副業開始など、転職以外のキャリアアップ手段にも十分活かせます。

特に30代以降の事務職の方は「転職市場でどう評価されるかわからない」と不安に感じることもあるでしょう。そういった場合は、まず現職でスキルを活かして実績を積み、そのうえで転職活動に踏み出す流れが現実的です。焦りは禁物で、スキルと実績を積み上げながらタイミングを見極めることが、長期的なキャリア形成につながります。

リスキリングを始める具体的な手順

「何から始めればいいかわからない」という方のために、実際に動き出す手順を整理します。

まず自分が目指すゴールを明確にし、それに必要なスキルを1〜2つに絞ります。次に、無料の学習リソース(YouTubeや公式ドキュメント)で試し学習を行い、本格的に学ぶ価値があると確認できたら、スクールや通信教育への投資を検討します。

  • ゴールを「1年後に社内のDX推進担当になる」「2年後にWebマーケティング職に転職する」など具体的に設定する
  • スキルの候補を2〜3つに絞り、まず無料の学習サイト(Udemy・Progate・Google デジタルワークショップなど)で試してみる
  • 学習コストが高い場合は、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」対象のスクールを検討する(条件によって最大70%補助)
  • 現職での実績として活用できるミニプロジェクトを1つ作り、ポートフォリオに加える
  • 転職も視野に入れているなら、転職エージェントに現在の市場価値を確認しながら並行して進める

リスキリングは理想のキャリアを叶えるための第一歩です。自身のスキルを高めながら、転職活動を行うことで、効率的に目指す企業・職種へ近づくことができます。 動き出すタイミングは早いほど選択肢が広がります。

編集部からの一言|人事担当として感じた「事務職リスキリング」の現実

3社の採用担当として面接を重ねてきたなかで気づいたことがあります。リスキリングを転職活動に活かした求職者の多くは、「スキルを学んだこと」より「なぜそのスキルを選び、現場でどう使ったか」を語れる人のほうが、面接での印象がはるかに良かったという点です。

事務職の方は、業務プロセスへの理解度・正確性・周囲との連携力という強みをすでに持っています。そこにデータ活用や自動化スキルが加わると、採用担当者の目には「業務全体を設計・改善できる人材」として映ります。これは他職種からの転職者にはなかなか真似できない強みです。

一方で、「とりあえずITスキルを学べばいい」という思い込みも危険です。大切なのは、自分の経験と新しいスキルをどう組み合わせるかというストーリーを持つことです。そのストーリーを整理するうえで、転職エージェントへの相談が意外に役立ちます。自分では気づかなかった強みや市場価値を客観的に教えてくれるからです。

転職エージェントへの相談と合わせて進めるのが最短ルート

リスキリングを「独学でコツコツ進める」だけでは、転職市場で本当に求められているスキルとのズレが生じることがあります。第二新卒・若手の転職を考えている場合は、転職エージェントに相談しながら、自分に必要なスキルと転職タイミングを並行して検討することが効率的です。

あわせて読みたい
第二新卒の転職エージェントおすすめ7選|タイプ別の選び方と活用術 「今の会社が合わないけれど、社会人経験が浅いまま転職してもいいのだろうか」と悩んでいませんか。短期間での離職を後ろめたく感じ、転職活動の第一歩を踏み出せずに...

まとめ|事務職のリスキリングは「今の強みを活かして一歩先へ」

リスキリングは「今の仕事を全て捨てて新しいことを始める」ことではありません。事務職として積み上げてきた業務経験・正確性・プロセス理解という強みを土台に、そこに新しいスキルを上乗せしていく発想が最も現実的で効果的です。

  • 事務職の定型業務はAI・RPAによる代替が進んでいる。今のうちにスキルアップに着手することが、長期的なキャリアの安定につながる
  • 優先スキルはデータ分析・業務自動化・Webマーケティング・経理・語学の5領域。自分のゴールから逆算して1〜2つに絞って始める
  • 経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を使えば、受講料の補助(条件によって最大70%・最大56万円)を在職中に受けられる。詳細な条件は公式サイトで確認を
  • 学んだスキルは数値や成果物として実績に変え、履歴書・面接でストーリーとして語れる形にしておくことが転職成功のカギ
  • 転職も視野に入れているなら、リスキリングと並行して転職エージェントに現在の市場価値を確認しておくと動きやすくなる
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次