「英語を活かして貿易事務に転職したいけど、どのくらいの英語力が必要なんだろう」と不安に感じていませんか。求人票を見ると「英語必須」とは書いてあるものの、会話が必要なのか、書類だけでいいのか、具体的なイメージがつかみにくいですよね。
実は、貿易事務の英語には「読み書き中心」と「英会話も必要」の2パターンがあり、自分の英語力に合った職場を選ぶことで、未経験や英会話が苦手な方でもキャリアをスタートできる余地があります。
この記事では、人事コンサルタントとして採用現場に関わってきた編集部の視点から、貿易事務における英語の実態・必要スキル・資格・転職への活かし方を体系的に整理します。「自分に向いているか」を確かめるチェックポイントも含めてお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
貿易事務の仕事内容|英語はどの場面で使うのか
貿易事務の仕事を一言で表すと、「輸出・輸入に関わる事務手続き全般のサポート」です。ただ、実際の業務内容は勤務先の業種によって大きく変わります。それを知らずに「英語が必要」という印象だけで諦めてしまうのは、非常にもったいないことです。
貿易事務の主な業務
貿易事務が担う業務の代表的なものを整理すると、以下のとおりです。
- インボイス(送り状)・パッキングリスト(梱包明細書)・船荷証券などの英文書類作成
- 受発注業務、輸出入に関する通関手続きのサポート
- 倉庫・船会社・フォワーダーとの手配・調整
- 海外取引先とのメール・電話対応(コレポン業務)
- 外貨管理や決済書類の処理
このうち英語が直接からんでくるのは、書類作成・メール対応・電話対応の3つです。重要なのは、「電話で英会話が必要か」「書類の読み書きだけか」によって、求められる英語レベルが大きく異なるという点です。
職場の業種によって英語の使い方が変わる
採用の現場で求職者からよく聞かれるのが、「どの会社に入っても同じ英語レベルが必要ですか?」という質問です。答えはノーです。
貿易事務が活躍する業種はメーカーや商社(交渉が主な業務)、国内の通関業者(輸出入で行う手続きを代理で実行)、倉庫会社や船会社、フォワーダー(海外への輸送業務)と多岐にわたります。 それぞれの英語使用シーンを整理しておきましょう。
- 商社・メーカー(輸出入部門):海外取引先との直接交渉やメール往来が多く、英会話も含めた総合的な英語力が求められます。
- フォワーダー・船会社:書類作成中心ですが、英語メールでの問い合わせ対応が発生します。
- 通関業者:通関業者なら、日本企業とのやり取りとなるため、英語を使用しません。商社やメーカーから輸出入の手配をし、さまざまな企業とのやり取りを代行します。 英会話が苦手な方には特におすすめです。
つまり「貿易事務=ハイレベルな英会話が必須」というのは代表的な誤解です。業種と担当業務によっては、読み書き中心の英語力でも十分にキャリアをスタートできます。
貿易英語の実態|どのくらいの英語力が必要か
「英語力はどのくらい必要ですか?」という質問は、求職者から最も多く受ける問いのひとつです。一般的な目安はあるものの、正直に言えば「担当業務と勤務先次第」です。ただ、転職市場での共通した基準はおおよそ存在します。
TOEICスコアの目安
求人票を読んでいると、多くの場合にTOEICのスコアが必須または歓迎条件として記載されています。
貿易事務の求人には多くの場合、必須条件・歓迎条件としてTOEICの点数が記載されています。入社後の業務内容によって条件となる点数は異なるのですが、500〜750点程度に設定されている場合が多いようです。
また、TOEIC600〜700点以上あれば評価が高くされやすくなります。 TOEICの他に英検2級以上や日商ビジネス英語3級以上も評価の対象とされることがあります。
ただし注意が必要なのは、スコアはあくまで「入口の基準」に過ぎないという点です。現場で実際に必要とされるのは、スコアよりも「貿易書類の頻出フレーズを読み書きできる」「定型メールに返信できる」といった実践的な英語力です。
貿易書類の英語は「専門用語+定型表現」が中心
「英語の書類を扱う」と聞くとハードルが高そうに感じるかもしれませんが、実際の貿易書類は汎用性の高い表現と専門用語の組み合わせで成り立っています。
貿易事務で扱う書類の8〜9割は英語です。英会話を必要としない書類作成であっても、最低限の単語力・読解力は必須です。 一方で、貿易書類にはある程度決められた様式があるので、会社が用意したフォーマットに必要事項を入力したり修正したりするのが基本です。
つまり「一から英文を組み立てる」というよりも、「定型フォーマットに正確な情報を入力し、用語の意味を理解して確認する」能力が求められる場面が多いのです。これは、英語学習の方向性にも影響します。TOEIC対策をしながら「貿易英語の頻出単語」を並行して覚えると、実務直結の準備ができます。
コレポン業務はより高い英語力が必要
求人票に「コレポン業務あり」と記載されている場合は、一段高い英語力を想定しておく必要があります。
コレポン業務とは、海外の取引先からの問い合わせや連絡にメールや電話などで対応する仕事のこと。英語を使っていちからビジネス文書を作成するスキル、相手の顔が見えない状態でもスムーズに英会話でコミュニケーションできるスキルが求められていると考えたほうがいいでしょう。
コレポン業務がある求人は給与水準が高くなる傾向もあります。英語力に自信がある方は、この領域を狙うのが年収アップの近道でもあります。
貿易事務に必要な英語以外のスキル
「英語ができれば採用される」と思いがちですが、これもよくある誤解のひとつです。採用担当者が実際に見ているのは、英語力だけではありません。
PCスキルと正確性
貿易事務に携わるなら英語スキル、パソコンスキル、貿易実務スキルの3つが必要です。 PCスキルについては、メール・Excel・Wordといったオフィスワークで多用されるソフトをスムーズに操作できることが最低限のスキル条件となるでしょう。求められるPCスキルはさほど高くなく、平均的な事務職と同等程度と考えていいでしょう。
ただし「正確性」の基準は一般事務より厳しいと考えてください。貿易書類は1文字・1桁の誤りが通関の遅延や取引トラブルに直結するからです。スピードと正確性を両立できることを面接でアピールできると評価につながります。
スケジュール管理能力とトラブル対応力
貿易事務の仕事にはスケジュール管理能力の高さも重要です。例えば、6ヶ月後にアメリカに商品を届けなければならないとします。このとき工場に対して生産スケジュールや在庫を確認し、港までの輸送手段、港での保管手段を手配し、さらに輸出用の船の予約を行うといった作業が発生します。
加えて、貿易にはハリケーンや異常気象などの不測のトラブルがつきものです。想定外の事態が起きた際に冷静に代替案を提示できる対応力も、貿易事務には欠かせない素養です。「几帳面で、マルチタスクが苦にならない」方は向いている職種といえます。
貿易事務で役立つ資格と取得の優先順位
「資格がないと採用されませんか?」という相談をよく受けます。貿易事務は資格必須の職種ではありませんが、資格を持っているかどうかが書類選考の段階で差を生むことは確かです。未経験での転職を狙うなら、なおさら資格の重要性は増します。
貿易事務の資格を取得することで、転職市場においてアピールポイントとなります。例えば「貿易実務検定」や「通関士」の資格を取得していると、貿易に関する専門性をアピールでき、採用担当者に高く評価される可能性が高まります。
優先して取得したい資格3選
採用現場の観点から、優先順位をつけて整理します。
- TOEIC(目標600点以上):英語力の客観的な証明として最もシンプル。年10回受験機会があるため、転職活動のスタート前に1度受けておくことを強くおすすめします。
- 貿易実務検定: 「貿易実務検定」で学ぶ内容は、輸出入書類の作成やインコタームズなど、貿易事務で即座に役立つ知識が含まれています。 C級から始められるため、未経験者でも取り組みやすい資格です。
- 通関士試験:合格率は10%前後と難易度が高いですが、輸出入通関手続きのエキスパートであり、貿易関係における唯一の国家資格です。近年では、貿易業務のスペシャリストを目指し、スキルアップや転職に有利なツールとして取得する人が増えています。
取得の順番に迷ったら、まずTOEIC→貿易実務検定C級→B級の順で進めるのが最もコスパが高いルートです。通関士は時間と労力がかかるため、ある程度実務経験を積んでからチャレンジする方が現実的です。
未経験から貿易事務に転職できるか|正直な現状と突破口
「未経験でも貿易事務に転職できますか?」という質問への答えは、「できる場合とそうでない場合がある」です。歯切れの悪い答えに聞こえるかもしれませんが、これが採用現場の実態です。
即戦力となる経験者を求める傾向にあるため、貿易事務未経験では、募集も少なく、就業も難しくなります。しかし、国内での営業事務経験に加えて英語力を備えているといった場合には、サポート業務からスタートするなど未経験でも就職できる場合があります。
採用担当者として多くの書類を見てきた経験から言うと、未経験者が評価されるポイントは3つあります。
- 事務職の経験(一般事務・営業事務)があること
- TOEICなど英語の資格スコアを持っていること
- 貿易実務検定C級など、貿易の基礎知識を証明できる資格があること
この3つが揃っていると、書類選考の通過率が明確に変わります。「いきなり転職活動を始めるより、3〜6ヶ月間資格取得と並行して活動する」戦略が、未経験者には最も合理的です。
英語が苦手でも入りやすい間口
英会話に自信がないが貿易事務に興味がある、という方には通関業者への応募が一つの突破口です。 英語ができない場合でも、書類作成が業務の中心の企業には応募可能です。しかし、英会話のスキルがあれば仕事の幅も広がり、応募できる企業も増えるでしょう。
また、未経験の方の場合、最初は輸出入の英文書類作成やチェック、貿易に関するデータ入力や、外貨貨物の管理など入りやすい業務からスタートします。 まずは経験を積みながら徐々にスキルを広げていく、という現実的なキャリアパスを描いておくことが長続きの秘訣です。
貿易事務の年収と将来性|英語スキルがキャリアにどう影響するか
「英語を活かした仕事をしたいが、給与水準はどうなのか」という点も気になるところでしょう。正直に言うと、貿易事務の年収は英語レベルと担当業務の範囲によって大きく変わります。
令和5年度の賃金構造基本統計調査から算出すると、貿易事務が含まれる運輸・郵便事務従事者の平均年収は約491万円でした。国税庁の調査によると、日本全体の平均年収は458万円であり、日本全体の平均と比べても高い水準です。 (参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」、国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」)
ただし、これはあくまで平均値です。英会話対応可能・コレポン業務経験あり・TOEIC700点以上といった条件が重なると、採用市場での評価は上がります。特に外資系企業や大手商社の貿易事務ポジションは、英語力次第で年収600万円を超えるケースも存在します。
貿易事務からのキャリアパス
貿易事務はゴールではなく、キャリアのスタートラインとして捉えることが重要です。 貿易事務で得た知識やスキルを活かし、他職種へ転身するキャリアパスもあります。海外商品を現地で仕入れる「バイヤー職」は、貿易事務で得た貿易に関する知識を活用できます。また、英語力を活かして外資系企業に転職する道もあります。
採用コンサルタントの立場から見ると、貿易事務を3〜5年経験した方は、ロジスティクス・バイヤー・国際営業・外資系一般事務など、異なる職種への横展開がしやすいと感じます。英語と専門知識の両方が武器になるため、転職市場での流動性が高いのが特徴です。
編集部の見立て|貿易英語の「難しさ」はどこにあるか
複数の企業の採用設計に関わってきた経験から言うと、貿易事務における英語の「本当の難しさ」は、会話力よりも専門用語の習得とドキュメントの精度維持にあります。
インボイス・B/L(船荷証券)・L/C(信用状)・インコタームズといった貿易固有の用語は、英語の教科書には出てきません。これらはTOEICのスコアとは別軸の知識です。言い換えると、TOEICスコアが高くても貿易用語を知らなければ即戦力にはなれませんし、逆にTOEICスコアが500点台でも貿易用語を覚えて定型書類の対応ができれば採用担当者の評価は変わります。
求職者の方に多い誤解として「英語全般のスキルを上げてから転職を考えよう」というパターンがあります。実際は、貿易英語に特化した学習(頻出書類・定型フレーズ・インコタームズ)を優先する方が、転職活動のタイムラインを大幅に短縮できます。
貿易実務検定C級のテキストは、こうした実務直結の英語知識を体系的に学べる素材としても活用できます。転職活動の準備として、まず同テキストを一読しておくことをおすすめします。
よくある疑問に答えるQ&A
読者から多く寄せられる疑問を、Q&A形式でまとめました。
Q. 英会話がほぼできない状態でも貿易事務に転職できますか?
A. 業種によっては可能です。通関業者への転職であれば英会話を使う機会がほぼなく、書類の読み書きスキルとPCスキルが主な評価軸になります。「まず英会話が必要ない職場でキャリアをスタートし、その間に英語力を磨く」というルートは現実的な選択肢です。
Q. TOEIC何点から求人に応募できますか?
A. 求人によって異なりますが、500点を下回ると英語コミュニケーションが必要な求人への応募が難しくなるとされています。 英語力の目安として、TOEIC500〜750点程度、英検2級以上、日商ビジネス英語3級以上が目安とされています。 まず600点を目標に受験し、スコアを持った状態で転職活動に臨むのが安全です。
Q. 一般事務から貿易事務への転職は難しいですか?
A. 一般事務の経験はプラス評価になります。特にExcel・Wordの操作スキルや、正確な書類処理の実績は貿易事務でもそのまま評価されます。そこに英語スキルの証明(TOEICスコア)と貿易基礎知識(貿易実務検定)を加えることで、未経験転職の成功確率を高めることができます。
Q. 派遣と正社員、どちらで入るのが良いですか?
A. これは目的によって変わります。「まず経験を積みたい」「複数の業種で貿易事務を体験したい」という場合は派遣からのスタートが合理的です。一方、安定したキャリア形成や年収アップを早期に狙うなら、正社員求人に絞って転職活動を進める方が中長期的に有利です。転職エージェントに相談しながら、自分の状況に合った戦略を決めることをおすすめします。
転職エージェントを活用して貿易事務の求人を探す
貿易事務への転職を本格的に考えるなら、転職エージェントへの相談が有効な次のアクションです。自分の英語レベルや職歴がどの求人に合致するか、客観的に評価してもらえるからです。
特に未経験からの転職や、英語を活かしたい若手・第二新卒の方は、複数のエージェントに登録して初回面談を受けてみることをおすすめします。面談で「自分の英語力がどの求人レベルに対応しているか」を具体的に確認できるのが最大のメリットです。

まとめ|貿易英語の仕事は「英語の種類」を理解してから動く
貿易事務における英語は、「流暢な英会話が必須」ではなく「職場の業種と担当業務によって求められる種類が違う」のが実態です。この記事で解説してきたポイントを振り返ります。
- 貿易事務の英語は「読み書き中心」と「英会話も必要」の2タイプがあり、業種によって大きく異なる
- TOEICの目安は500〜750点程度。600点以上を目指すと評価が高まりやすい
- 英会話が苦手な場合は通関業者や書類作成中心の求人がエントリーしやすい
- 未経験転職にはTOEIC+貿易実務検定C級の取得が最もコスパの高い準備方法
- 貿易英語の核心は汎用英語力より「貿易固有の専門用語と定型表現の習得」にある
「英語力が足りないから」と諦める前に、自分の英語レベルに合った職場を探すという視点を持ってください。転職エージェントへの相談と並行して、貿易実務検定の学習を始めることが、今すぐできる最も具体的な一歩です。

