「事務職に転職したいけど、今の自分のスキルで通用するのだろうか」「リスキリングって聞くけど、何をどう学べばいいの?」——そんな不安を感じているあなたへ、この記事を書きました。事務職は安定志向の方に根強い人気がある一方で、DXの波によって求められるスキルは確実に変化しています。でも、だからこそ「正しい方向で学び直す」ことが、転職成功への近道になります。この記事では、事務職への転職を目指すうえで取り組むべきリスキリングの内容、使える国の補助制度、そして転職活動をスムーズに進めるためのポイントを、実践的な視点でお伝えします。
事務職とリスキリングの関係|なぜ今「学び直し」が必要なのか
事務職はこれまで「パソコンが使えれば入りやすい職種」として知られてきました。しかし近年、その前提が大きく揺らいでいます。
AIに取って代わられるとされる仕事の一つに、事務職も入っています。厳密には、事務職の中でも定型的な業務(同じことを繰り返すような業務)は、そう遠くない将来、AIに代替されるかもしれません。 こうした状況の中で、事務職への転職を有利に進めるためには、ただ「経験があります」と言うだけでは不十分になりつつあります。
事務職として生き残るためには、気遣いや臨機応変な対応といった人間でなければできない対応だけでなく、AIを操作できるようなスキルや、今までよりも高度なパソコンスキルなどが必要になってくると考えられます。
一方で、これはチャンスでもあります。 転職市場においては「即戦力」だけでなく「成長可能性のある人材」が求められています。 リスキリングに取り組んだ実績は、まさに「変化に対応できる人材」であることの証明になるからです。
経済産業省は、リスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること」と定義しています。 単なる資格取得ではなく、時代の変化に乗るための学び直しというのが本質です。
事務職への転職で役立つリスキリングのスキル|優先度順に整理
では、事務職を目指すうえで具体的に何を学べばよいのでしょうか。編集部では、求人の傾向や転職支援の現場で語られる情報を整理したうえで、優先度の高いスキルを以下にまとめました。
Excelを中心としたOAスキルの底上げ
事務職では、今もExcelは基本中の基本です。しかし「入力できる」レベルにとどまらず、関数・集計・ピボットテーブルを使いこなせるかどうかが採用の分かれ目になるケースも多くなっています。
Excel VBAは、Excel上で行う作業の自動化やExcelの機能拡張などができるプログラミング言語です。事務や経理でよくあるExcelでのデータ入力作業や集計作業を効率化・自動化できるため、事務作業や経理作業との相性が良く、事務職におすすめのスキルです。
Excel VBAは、他のプログラミング言語と比べて習得しやすく、プログラミングに自信がない方でも十分に習得できます。 学習のハードルが比較的低いため、リスキリングの最初の一歩として取り組みやすい分野です。
情報セキュリティの基礎知識
個人情報や機密データを扱う事務職では、セキュリティ意識の高い人材が重宝される傾向にあります。
情報セキュリティマネジメント試験は、情報セキュリティマネジメントの計画・運用・評価・改善を通して組織の情報セキュリティ確保に貢献し、サイバー攻撃などの脅威から継続的に組織を守るための基本的なスキルを認定する試験とされています。業種・職種を問わず、また、営業・企画・製造・総務・人事・経理などの部門も限定されず、多くの現場で今後一層必要になるのが、情報セキュリティの知識を身につけた人材です。
「守り」の要となるこのスキルは、企業の社会的信用を担保するために不可欠です。セキュリティ意識の高い人材は組織のリスク管理において重宝され、将来的にも安定した需要が見込める分野といえます。
ITリテラシーとDX基礎
クラウドツールやビジネスチャットツール(SlackやTeamsなど)の活用が標準になりつつある現在、基礎的なITリテラシーは事務職においても必須のスキルになっています。
デジタル化やオンライン化が急速に進む現在、IT技術者を目指さない従業員でも、基本のITリテラシーは必要です。ITリテラシー分野のリスキリングを行えば、ITの利活用による業務効率の向上や、安全なデータ管理が可能になります。
ITリテラシーや新技術知識、DX概要やデータの知識、課題解決力を高める思考を学び、新技術を利活用した業務効率化や新しいサービスなど、価値を生み出すための実践的なスキルを習得します。 このような学びは、転職先でも即日活用できる実践的な武器になります。
簿記・経理系の資格(事務の幅を広げたい方へ)
一般事務から経理事務・総務事務などへのキャリア幅を広げたい方には、日商簿記検定も有力な選択肢です。
日商簿記検定を取得することで、企業の財務状況を正確に把握し、適切な経理処理ができるようになります。このスキルは、経理や財務部門での業務に直結し、キャリアアップに役立ちます。 転職先の選択肢を広げるという観点でも、事務職を目指す方には取り組みやすい資格の一つといえます。
国の補助制度を賢く使う|リスキリングにかかる費用を抑える方法
「学び直したい気持ちはあるけど、講座代が心配」という方は多いと思います。実は、リスキリングには国が用意した手厚い補助制度があります。経済的な理由でためらっている方は、ぜひ活用を検討してください。
経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
個人向けのリスキリング支援として最もよく知られているのが、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」です。
本制度の補助金額は、講座受講料の最大70%(最大56万円)としています。補助される金額は、本事業を通して個人が行った内容によって異なります。たとえば、講座受講のみは50%(受講費用の1/2相当・上限40万円)、講座受講を経て転職後1年間継続就業が確認された場合はさらに20%(受講費用の1/5相当・上限16万円)の補助を受けられます。
在職者が自らのキャリアについて民間の専門家に相談できる「キャリア相談対応」、それを踏まえてリスキリング講座を受講できる「リスキリング提供」、それらを踏まえた「転職支援」までを一体的に実施する体制を整備します。 キャリア相談・学習・転職支援がセットで受けられる点が大きな特徴です。
経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業における個人向け支援の終期は令和8年度末(2027年3月末)です。本事業は当初令和6年度末(2025年3月末)までの予定でしたが、2024年に事業期間の2年間の延長が発表されました。 2026年時点では引き続き活用できる制度ですが、期限を念頭に置いて早めに動き始めることをおすすめします。
PCスキルを習得して事務職にキャリアチェンジしたい方や、育児ブランクがあるので最新のDXを学び直して転職したい方なども対象となります。 事務職への転職を志している方にとって、活用しやすい制度といえます。
厚生労働省「キャリア形成・リスキリング推進事業」
厚生労働省でも、個人向けの無料支援制度が整備されています。
キャリア形成・リスキリング推進事業では、個人の方・企業・団体の方・学校関係者の方を対象に、ジョブ・カードを活用して様々なキャリア形成支援やリスキリング支援を無料で行っています。
無料でキャリアコンサルティングを受けながら、自分に合ったリスキリング計画を立てることができます。まず「何を学べばいいかわからない」という段階の方にとっても、気軽に利用できる窓口です。
編集部が整理|事務職転職を目指す方がリスキリングで陥りやすいパターン
編集部では、キャリア相談の公開情報や転職支援の現場で語られる傾向を整理する中で、リスキリングに取り組んで事務職への転職を目指す方にありがちな「つまずきポイント」が見えてきました。特定の体験談を紹介するものではありませんが、参考になる傾向としてお伝えします。
「資格を取ったら終わり」と思いがちな落とし穴
リスキリングで資格を取得したものの、それを履歴書に書くだけで終わってしまい、転職活動でうまく活かせなかったというケースが少なくないとされます。
リスキリングの成果は、転職活動での「自信」につながります。講座を通じて得たスキルを、書類・面接でどのように表現するかも重要なポイントです。 学んだ内容を「どの業務に活かせるか」「どのような課題を解決できるか」という形で言語化できるよう、日頃から意識しておくことが大切です。
「流行りのスキル」だけを追いかけてしまうパターン
AIやプログラミングが注目を集めているからと、自分の目指す職種と関係のないスキルを学んでしまうケースもあります。
リスキリングは、必ずしもゼロから新しい分野に挑戦することではありません。むしろ、これまでの実務経験に新しいスキルを組み合わせる掛け算こそが、賢い差別化戦略です。 事務職への転職であれば、ExcelやITリテラシーなど現場に直結するスキルを優先するほうが、採用担当者に刺さりやすいといえます。
リスキリングでは「とりあえず人気のスキルを学ぶ」という選び方はおすすめできません。学習に時間や労力をかける以上、仕事やキャリアにどうつながるかを考える必要があります。 目指すポジションから逆算して学ぶ内容を選ぶことが、時間とお金の無駄を防ぐ最善策です。
30代以降で事務職を目指す方へのヒント
異業種・異職種からの転換で事務職を目指す場合、特に30代以上では「即戦力性」を問われる場面が増えます。
これまでの経験(顧客対応、書類整理、スケジュール管理など)を「事務職で活かせるスキル」として整理し直すことが、選考で大きな差をつけます。加えて、リスキリングで得たITスキルや資格を掛け合わせることで、「即日戦力になれる根拠」を作っていけると、書類選考・面接ともに手応えが変わってきます。
リスキリングから事務職転職までの流れ|ステップで確認
「いつ学んで、いつ転職活動を始めればいいの?」という疑問に答えるために、事務職転職を目指すリスキリングの基本的な流れを整理します。
- キャリアの棚卸しをする(これまでの経験・スキル・強みを書き出す)
- 目指す事務職の種類を絞る(一般事務・経理事務・医療事務・営業事務など)
- 不足しているスキルを特定し、学ぶ内容を決める
- 補助制度を活用しながらリスキリング講座を受講する
- スキルを職務経歴書・面接でどう表現するか言語化する
- 転職エージェントに相談しながら求人活動を進める
ご経験やスキルの棚卸し、強み・弱み・仕事への志向性・キャリアビジョンの明確化のサポート、リスキリング講座の検討のサポートを行います。 こうした一連のプロセスを、補助事業者やキャリアコンサルタントのサポートを受けながら進めることができます。一人で抱え込む必要はありません。
リスキリング転職を目指す方は、希望やスキルに合う求人が多様なので複数の転職エージェントを同時に活用するのが効果的です。それぞれのエージェントが独自の求人情報を持っているため、複数登録することでより多くのチャンスに出会いやすくなります。
事務職への転職を成功させるために転職エージェントを活用しよう
リスキリングで学び直しを進めながら、転職活動を並行して動かすのは一人では負担が大きいものです。職種未経験での事務職転職、あるいは異業種からの転換には、専任のキャリアアドバイザーに相談しながら進めると、書類・面接の準備から求人選びまでサポートを受けられます。
まずは登録・無料相談だけでも、自分のキャリアの方向性が整理できます。以下の記事では、特に20代・第二新卒・異業種転換を検討している方に向けた転職エージェントの選び方と活用術をまとめています。ぜひ参考にしてください。

まとめ|リスキリングで事務職への転職を一歩ずつ進めよう
事務職を目指したいけれどスキルに不安がある方にとって、リスキリングは確実に可能性を広げる手段です。制度と学びを上手に組み合わせながら、着実に前進していきましょう。
- 事務職への転職にはITリテラシー・Excel・情報セキュリティなど実務直結のスキルが特に有効
- 経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」では、最大70%(最大56万円)の受講費補助が受けられる(個人向け支援の終期は令和8年度末・2027年3月末)
- 流行スキルを追うより、目指す職種から逆算して学ぶ内容を選ぶことが遠回りを防ぐ近道
- 学んだスキルは「どの業務に活かせるか」を言語化してこそ、書類・面接で評価につながる
- 転職エージェントを活用することで、求人探しから書類・面接対策まで一貫したサポートが受けられる

